disc review干し忘れた洗濯物、彼女のタバコの吸い殻、なんとかキリコの漫画

shijun

BOYネズミハナビ

release:

place:

意味深なレビュータイトルになってしまったが、これらは全て曲中で効果的に使われているワードの数々である。これらのワードに何か引っかかりを覚えた人には、何か響くものがあるんじゃないだろうか。

 

東京を中心に活動するギターロックバンド、ネズミハナビの2ndフルアルバム。鋭利でノイジーなギターに斬りかかれながら、絞り出すように痛切に歌い上げるのは、人間臭すぎる男女関係だったり、屈折した欲求だったり。美しくも儚いメロディラインと、鈍くきらめくバンドサウンドが交差するセンチメンタルな曲もある。爽やかさは皆無であるが、決して大人には成り切れていない感情や行動の数々が、「BOY」というタイトルに集約されている。

 

心が壊れてしまった、もう自分の物に成ることのない女の子の事を振り返りながら、彼女の未来を案ずる#3「ハッピーライフ」。「お願いが一つあります どんなにみっともなくてもいいから 生きていてください 頼むよ」と言う悲痛な叫びが強烈である。「小っちゃ」くて「ショートカット」で、「なんとかキリコ」の漫画を読んでいる、という断片的な情報から一人の女子像を明確に浮かび上がらせる手法も、あざとくも痛切さに色を添えている。これがネズミハナビというバンドである。

 

強烈なタイトルが目を引く#7「裸の君の笑顔をもう一度メチャクチャにしてやりたい」。終わった恋に対する後悔と未練を切なさたっぷりに歌い上げる、剥き出しだが美しいバラッド。後悔の中想起される場所はベッドの中だったり、ATMの前だったり、ロマンチックでキラキラした世界観とは無縁な、どこまでも現実的な歌詞が胸を締め付ける。

 

他にも、セックスと日常に辛気臭く交差していく様を描いた#1「Dance.」、内省的な自己に対する内省的自己批判という救いのないテーマな#5「センチメンタルは体に毒です」、パンクロックの精神を引用したネズミハナビ流人生賛歌#8「1974」、慎ましやかだが直球なラブソング#9「タバコ」など、やや屈折した、しかしそれでも真っ直ぐな「BOY」の泥臭い日常が詰まった一枚になっている。人を選ぶ世界観ではあるが、ハマる人はボロボロ泣けるし、明日から生きていく力も貰える、そんな一枚だと思う。

 

 

 

 

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

このライターの記事を読む