disc review退廃したサイケデリアへと引きずり込む狡猾な従者達

shijun

Exquisite CorpseWarpaint

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アメリカはロサンゼルスの女性4人組アート・ロックバンド、WarpaintのデビューEP。ex.Red Hot Chili Peppersのジョン・フルシアンテがmixを担当している。サイケデリックな音像で紡ぎ出される、溢れんばかりの退廃と悲哀が特徴のバンドである。複雑な曲展開が多いが、トリップ感のある音像が酔いを誘発してくるためその深淵を理解せずとも楽しめる。メンバー4人中3人がVo.を担当し、一癖あるメロディラインも随所で見られ、歌モノとして楽しむことも不可能ではない。

物悲しいギターフレーズが少しずつサイケデリアを増していき甘美なメランコリック・トリップを味わわせてくれる#1「stars」。虚ろに歌われるボーカルラインも物悲しく、寂しく光る星々を想起させる。奇妙で哀し気なシンセのフレーズが曲を引っ張っていく#2「Elphants」。加工され不気味に歪んだボーカルに呻りを上げ続けるギター、アグレッシブなリズム隊、終始転がり続ける曲展開、、、聞き手の理性は墜落し負の衝動と悲哀にトリップさせられる。前曲とは打って変わってギターアルペジオとふわっとしたシンセを中心にしっとりとした展開が続く#3「Billie Holiday」。しっとりとした中でも音は常に変化し続けており、うっかり歌メロを追い続けようものならすっかり様変わりした周囲の景色に面食らってしまうことだろう。

曲名にも度肝を抜かれる#4「Beatles」。民族音楽的でコミカルさすら漂う歌メロにも驚かされるが、この曲の真髄はギターソロ、そしてその後の展開であろう。サイケデリックなギターの音に酔っている内に少しずつ得体のしれない世界に引き込まれていき、最終的には冷たい水底に放置される。かと思えば次の瞬間には一位相ずれた元の世界に急に引き上げられる。予想不可能な複雑な展開、しかしそのすべてが何故か耳馴染みが良いのも怖い。#5「Burgundy」ではダンサブルで直球なビートが聴け、相変わらずトリップ感のあるサウンドと相まってちょっとニューウェーヴ的な質感に仕上がっている。#6「Krimison」ではシンプルかつ性急なリズム隊の上にオルタナティブなギターが乗っかり少しCloud Nothings等に通ずる部分も感じさせるか。恐らくアルバム中最も分かりやすい曲ではあるが、バッドトリップ感は健在。

その後の作品ではエレクトロニカ要素が強まったり、ドリーム・ポップ的アトモスフィアも芳せた楽曲も見られるのだが、今作ではその風潮は抑えめでむしろニューウェーヴ、ポストパンクの影響を強く感じるサウンドと言えるだろう。とは言え精神性はあまり変わっておらず、今作もそれ以降の作品も退廃したクールネスの中に快感を感じ取れる人ならばきっと気に入る作品になっている筈だ。

余談だが、こんな仄暗い音楽性にもかかわらず、何故かPVに出演する彼女達は楽しげなことが多い。今作収録曲も例に漏れずである。退廃的世界観とノリノリな彼女達のミスマッチさに注目してみるのもいいだろう(?)。

 

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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