disc reviewmail interview cllctv. meets ophill

tomohiro

eugenius、dinosaur jr、posiesとかメロディーがあってそれをディストーションで少しルーズに鳴らしているバンド達がルーツになっている


ツジ:こうして種々のバックグラウンドを持つバンドとして始動したophillですが、バンドとしてはどういった音楽からの影響が強いと思いますか?

川上:バンドとして影響を受けているのはteenagefanclub,Built to spill,wilco,flaming lips,grandaddy,joan of arc,peter ivers,初期のgong等のUSインディーとサイケとカンタベリー系かと思います。日本だとsick of recorderがやっていたことが理想的だと思っています。

ツジ:インディーロックの大御所が名を連ねていますね。時代としてはまさに90年代前半。現行のインディーロックには、ポストロックやエモの系譜が根強く存在しているように思うのですが、ophillの音楽には、それとはまた違ったルーツが潜んでいるように感じていました。
tortoiseの1stやMineralのシングル『Gloria/Parking Lot』が1994年リリースであることを思うと、まさにポストロック/エモ前夜の時代が川上さんの原点、ということなのでしょうか。

川上:そうですね。多分下敷きにあるのはTFCを幹にしたギターポップシーンだと思います。eugenius,dinosaur jr,posiesとかメロディーがあってそれをディストーションで少しルーズに鳴らしているバンド達がルーツになっていると思います。

 

20190414-13

ツジ:以前川上さんとお話しさせていただいた時に、sick of recorderやophillの音楽を、「ポストロック」であるという風に話されていた記憶があります。この解釈って今の『ポストロック』(=アメフト、ドンキャバ以降のキラキラした変拍子っぽい音楽)とは違うものだと思っていて、そこが興味深いなと感じました。川上さんが当時リアルで感じられていたポストロックやエモってどんなものだったんでしょうか?

川上:金山のgrooveと大須に円盤屋というレコード屋があって、そこはほんとになんでも仕入れてくれる面白いところでした。だから当時はなにもわからずにジムオルーク、gastr del sol、death cub for cutieやブレイド、don caballero、peleを聴いていました。あとで「音響派」と「emo」のコーナーが出来てそれぞれが分かれておいてあるのを見て「そう呼ぶんだ」と思っていましたね。postrockもemoも好きですけど私にとってはどちらも新しいポップの形を作ろうとするジャンルなのかなという感じです。

ツジ:「新しいポップの形を作ろうとするジャンル」というのは初めて聞いた考察ですが、不思議としっくりくる感じがします。エモなんかは泣き出しそうな胸をくすぐるメロディがあったりして、それも一つのキャッチーの形で。来たる次の音楽として希求していたものがあったそれらのジャンルは確かに大きなムーブメントを巻き起こし今尚発展し、聞かれ続けていますよね。その根幹には「ポップ」さが横たわっていたのかも。

川上:そういう意味で自分の中でpostrockを体現しているのはgastr del solのcamoufleurとwilcoのyankee hotel foxtrotなんです。(多分、世間的にはyankee~はpostrockには含まれないと思います。)ガスターデルソルがポップに接近したのとオルタナカントリーのwilcoが音響派のジムと交わるという実験が衝撃的でした。それまでと違う音響面の配置とノイズ、曲構成も敢えてブツ切りにした上に少し不安定なメロディーが乗って、ぎりぎりポップに成立している新しいポップだと当時思いました。sick of recorderはUSインディーを消化した上で誰にも似ていない曲を作っていてその新しさがpostrock的だと思います。ophillがpostrockかというと違うと思うんですけど(笑)、そういう実験精神を持てるバンドになりたいと考えています。

ツジ:僕が聞いて育ってきたJPOPとは全く違う切り口のポップの話、とても面白く聞かせていただきました。ポップへの実験精神というのは、もしかしたらいつの時代でも新しい音楽の切り口となっていたのかもしれないですね。ophillの楽曲作りをする上で、なにか掲げているテーマや指標はあったりしますか?

川上:曲を作る上でのテーマはファニー感です。私の中のファニーは楽しいけど奇妙だったり、さみしいけど滑稽な感じという風にいくつかの感情が入り混じってるものです。Flaming lipsやPeter iversの曲にそれを感じます。あとアニメのタイムボカンのオープニング曲。メロディーと曲の展開が楽しいのに奇妙なサイケ感もあります。英語で歌ったらpeter iversみたいになると思います。(笑)こういった私の思うファニー感をオルタナやエモを経由して表現したいと思っています。

ツジ:Flaming lipsはアルバムごとにどんどん表情を変えて、ひょうきんに見せつつも、根は結構しっとりしている、そういったイメージがあります。

川上:Flaming lipsは普段頭悪そうなのに急にセンチメンタルな曲をやりますよね。そのバランス感が好きです。どっちかだけだと興味が薄れます。最近の彼らはシリアスすぎるのでもっと頭悪い感じに戻ってきてほしいです(笑)。

ツジ:インディーロックの流れで言うとパワーポップなんかはわかりやすいと思うんですが、センシティブさから出てくるキャッチーさ、ひょうきんさみたいなものが空元気的に表されているのがインディーロックの根っこの部分なのかなと感じるところがあり、それがなんだか他人事に思えない親近感の理由なのかもしれません。

川上:歌詞についてはam5のようにコード進行がシンプルなものには乗せる感情は少なめにしています。その方が伝わりやすいのかなと思っています。逆にコード進行が複雑なUFOとか3000mileは感情や情報を多く入れてよりごちゃごちゃさせています。

ツジ:ophillの楽曲は、時間がゆったり流れる情緒的なものと、感情がごちゃっと混線するものとの二方向がありますよね。これら二つは明確な意図を持って作り分けられていたんですね。この二軸のバランス感が、ライブ一つ取っても単調に見えずに楽しむことができる理由なのかなと感じました。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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