disc reviewmail interview cllctv. meets ophill

tomohiro

名古屋は面白い感じになっていると思います。若手もベテランも変に固まらずにオープンなところがいいです。だからどこにも属せてない私たちがいても大丈夫です(笑)。


ツジ:少し話が出ましたが、今作をリリースしたgalaxy trainとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

川上:イベントでお会いしたオーナーの梅木さんから「うちから出さない?」と言ってもらえて即答でお願いしました。
smokebeesの二人がophillをオーナーの梅木さんに勧めてくれて1st.epを聴いてくれていたみたいです。私もsmokebeesに注目していたらgalaxy trainが声をかけてシングルを出すことになって「さすがgalaxy trainセンスいいな」と思っていました。
今回、梅木さんにophillをリリースしようと思った理由を伺ったら「CD気に入ったのと、話したらTFC好きというところで決めた。」そうです。TFCに感謝です。

ツジ:ここでもシーンの繋がりが活かされていたのですね。川上さんがインディーロックに傾倒するきっかけになった、Teenage fanclubが繋いだ縁だと言うのもグッとくる話です。galaxy trainは愛知発のDIYレーベルですが、海外バンドのリリースも多く、ワールドワイドな支持を得ています。

川上:はい。galaxy trainはカセットテープとダウンロードコードというアナログとデジタルを合わせた形態を早くからやっていたし海外からの人気も高い。今はネットで海外にも音は届きますが、galaxy trainは海外にフィジカルで届く可能性があるのが魅力的でした。実際にアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等にカセットが旅立っていてとてもうれしいです。あとは梅木さんの全くブレない完全なDIY姿勢がカッコいいなと思っています。それとめちゃくちゃレコード買って聴く方なので信頼しています。

ツジ:フィジカルの、「手元に届く」という代え難い実感は大きな自信になりますよね。アメリカからヨーロッパまで!レーベルからリリースすることの大きな意味はやはりシーンの中から見つけてもらえることにあると思っていて、今回のリリースはまさに大成功だったの言えるのではないでしょうか。
今作の長期に渡る制作、終えてみてどうでしたか?

川上:良かったことは、改めて自分たちが求めている音がはっきりしたことです。普段のスタジオでも音についてはいろいろと話し合いをしていますが録音することで理想の音がはっきりとしました。あとは佐藤のギター録音が非常に時間がかかるので自宅録音で良かったと思いました(笑)。ophillの面白さは彼のギターによるところが大きいと思うので思う存分、納得いくまで録りなおしてもらいました。

ツジ:佐藤さんのギターは非常にエフェクティブで調整に時間がかかりそうですもんね(笑)。そんなファニーさも存分に発揮されている音源になったと思います。改めて、リリースおめでとうございます。

 

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ツジ:最後に、何度か話題に出した「シーン」の話をさせていただけますか。今、名古屋は大きなインディーロックムーブメントの中にあると感じます。影響し合う中で醸成されてきたこのシーンを中から見たお話を聞かせてください。

川上:名古屋は面白い感じになっていると思います。シーンはあるけどそれぞれ交差する余地があるのが名古屋の特徴ではないでしょうか。若手もベテランも変に固まらずにオープンなところがいいです。だからどこにも属せてない私たちがいても大丈夫です(笑)。

ツジ:良くも悪くもごった煮的だ、というのは名古屋のシーンを指してよく言われている言葉のように思います。他の地域だとシーンの中で対抗意識が強く、いつもヒリヒリしているというような話も聞いたりしました。名古屋は小規模ながら活力のあるシーンが根付き始めていることで、そのそれぞれの影響範囲が重なるところで面白いことが起きている感じがしますね。あんまりヒリヒリした印象は今のところ受けていません(笑)。

川上:スーベニア、sitaqは2枚看板でそれぞれの方向性を持っているから、彼らが認知されることで名古屋の幅が伝わると思います。
個人的によく聴いているのはyawarakai hitotachiです。細野晴臣のトロピカル期と現行のシティーポップがひねくれて混ざり合う感じがとても気持ちいい。ライブ観てみたいです。
motoki nakanoはハードコア経由でソウルとかフォーク感をローファイに抽出しててとても好きです。Sharks keep movingのjoin upという曲が好きなんですけど、感覚としてとても近いものを感じます。

 

ツジ:今や名古屋を代表するバンドへと押し上がってきたスーベニア、sitaq、さらにはmotoki nakanoは名古屋のレコードショップから得た恩恵を存分に受けた音楽をやっていますよね。yawarakai hitotachiはその下くらいの世代でしょうか?
東京に来て思ったのですが、名古屋はレコードショップを起点とした音楽の輪が強く根付いていると思っていて。それは形は様々であれ、若手に音楽を普及し、若手の音楽をフックアップするというショップの在り方が生み出した「シーン」なのだと思います。都会だけど、ローカルな感じが魅力かもしれませんね。
そんなシーンを下支えする「大人たち」も気になるところです。

川上:file-under、stiffslack、閉店してしまったandy,zoo等レコードショップとバンドの繋がりは強いですね。それぞれがシーンの起点やきっかけになっていると思います。
ベテランだとフラットライナーズは個人的に歌詞が刺さりまくるバンドです。まだ音源になってない曲で「クロネコヤマトの不在通知」というワードがある曲があるんですけど、やられます。必聴です。
スティーブジャクソンは今3人になっててめちゃくちゃいいです。名古屋のビートハプニングだと思います。THE PYRAMIDは観るとバンドやれなくなります。すごすぎて。(笑)
もちろんClimb The Mindも。サバの味噌煮を食べるときはいつもサバに「かっこよかったよ」と語りかけています。

ツジ:THE PYRAMIDの角田さんは名古屋の金山でブラジルコーヒーという喫茶店をされていますよね。喫茶店でありながらライブができる(しかも爆音で!)スペースとして多くのバンドを受け入れるこの場所も、名古屋のインディーロックを育むキースペースの一つのように思います。
Climb The Mindは言うまでもなく。名古屋のキーパーソンですね。いつ聴いても衝撃を受ける不思議な温かみの音楽です。

川上:ブラジルコーヒーは名古屋名所ですね。定食食べながらライブ観れます。もう少し若手の話をすると、オルタナフォークみたいな感じが好きなkittens、モノ・フォンタナが盆踊りしてるようなMURAバンク、名古屋インディーの要人が集まったI like birds、オーガニックなエレクトロニカみたいでかっこいいテトペッテンソン、ショートチューンが増えてよりパンクを感じるfish、ポップマエストロなbelinda may、新しい感覚のemoを感じる4brothers、轟音ポストロックのulm、lo-fiポップなbluevalley等々。他にもたくさん面白いことやってる人たちがいます。若者からベテランまでかっこよくて個性的なバンドが多いのが名古屋のいいところだと思います。名古屋がこのままの形で大きく注目されるといいですね。

ツジ:紹介いただいたバンドたちも含めて、ちょっとひねくれた感じが香るのが名古屋の音楽の面白いところなのかもしれませんね。
「インディーロックバンド」ophillの目から見えるものだけでも、これだけ多彩な音楽が緩やかなつながりで影響しあっているのが、名古屋の面白いところだと思っています。今回のophillのインタビューを通じて、ophillはもちろんのこと、他の名古屋の音楽にも目を向けてもらう機会になればとても嬉しく思います。
今回そのような場を作り上げてくださったophill川上さんに感謝を述べつつ、インタビューを終えたいと思います。お付き合いいただきありがとうございました!

川上:こちらこそありがとうございました!

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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