disc review錆びた刃物で幾度も傷つけられる感覚

tomohiro

I Will Be Your Blue Friendblue friend

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東京で活動する若手カオティックハードコアバンド、blue friendの1st フルレングス。同じく東京のカオティックハードコアバンドAsteniaと共にUSからCalculatorを招聘し、3バンドでの東名阪ツアーを敢行したことも記憶に新しいだろう。暴力性と刹那的煌めきを持ち合わせたながらエネルギーの赴くままに疾走し続ける楽曲、だがしかし、その精神性はどこまでもセンシティブで内向的だ。
ひとえにハードコアとくくってしまえば簡単だが、そのメンタリティはバンドによって大きく異なる。ボーカルワークにもそれは顕著に表れる。先述のAsteniaや同じく東京のHerlens(既に解散している)京都のzdzis law、などは溢れ出るある種野生的な、感情の奔流が彼らを動かし、マイク一本を握り彼らは全力でそれを聞き手にぶつけ、吐露し続ける。その過程で彼らの声は歪んでしまうのだ。その叫びは我々リスナーに本能的に訴えかけ、自然と我々は全身でその感情を表現したい気持ちに襲われる。
一方、blue friendやsans visageといったバンド達は、もっと悲痛で理性的な感情の昂ぶりが、救いを求めているようにすら感じる、涙声の叫びを発し続けるエネルギーとなり彼らを動かしている。彼らはむしろ感情に襲われていると言ってもいいだろう。そういった行き場のない感情の爆発が、彼らの声を歪ませている。そんな彼らの叫びはどこまでも我々を理知的に切り裂き続け、ついには膝を屈し、髪をかき乱し嗚咽することしかできないのだ。
かなり話が逸れてしまったが、そうした彼らのサウンドの特筆すべき点は、エモーショナルでありながらも、Convergeなどカオティックハードコアの先駆者達の息吹をその楽曲に感じることができるところにある。深い霧が立ち込める長いイントロから始まり、突然の暴発を見せる#2、#8などは彼ららしさが顕著に現れた白眉なトラックである。また、エモヴァイオレンスというよりもカオティックハードコア色を色濃く感じさせる、#3や#7も彼らの良さがよく表れている。
そして今回は秀逸なアートワークも特筆すべき点である。こればかりは手に取らないと分からないことであるためここでの名言は控えるが、自主レーベルを立ち上げリリースするそのDIY精神とセンスの良さ、情熱の深さがありありと感じ取れるだろう。

Midikai

Dasai

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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