disc reviewエバーグリーン・ギターポップ・フロム・パンク

shijun

sansoCatch-Up

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日本のガールズギターポップ/ポップパンクバンド、Catch-Upの3rdアルバム。アルバムジャケットこそおどろおどろしさを纏っているが、メロディ、アレンジともに基本的にはポップで、そこに日本人的切なさがノスタルジーをちくりと刺してくる。しかしそれ以上に注目したいのが、どこまでも心地よいサウンドである。パンクを通過した歪んだギターから、エバーグリーンなギターポップ的ギターまで、曲ごとに様々な心地よい音を聞かせてくれる。手数の多いドラム、うねるベースも心地よく耳や脳に語り掛けて来る。そこに癖のないボーカルが乗ることで、いつまでも聞いて居られる良質なギターポップが展開されているのだ。ちなみに、#1,#7でナンバガ時代の田淵ひさ子がギターで、#7ではBOaT時代の坂井キヨオシがピアノで参加している。

 

アルバムのオープニングを飾る#1は華やかに歪んだパンキッシュなギターが楽しげで、そこにいい意味でのチープさを湛えたメロディが絶妙にノスタルジーを煽ってくる、彼女らの真髄の一つとも言えるポップパンク・ナンバー。続く#2はギターの音がぐっとシリアスになり少し大人びた雰囲気も見せるが、ギターのフレーズなどにはパンクを通過したバンド特有のセンスを感じる。サビは清涼感溢れる音でかき鳴らされるギターとメロディのフックがどこまでも心地よい。続く#3では、浜辺の日差しのような暖かみのあるギターの音色が聞ける。といってもギラギラした真夏の昼間の海水浴場の日差しというよりは、早朝の、海に日差しが反射し始めた頃のキラキラした明るさ、である。清涼感とシリアスさを持った#2の色を「水色」とするなら、#3は「薄金色」とでも言えるだろうか。きらめきの中で淡々と進行していくが、Cメロではオルタナティヴな轟音も聞ける。短めのギターインストを挟み、#5はAメロ、Bメロではギターは過剰に主張せず、しかし上物として飾りつけの役割を果たし、サビでは待ってましたとばかりに轟音のシャワーを浴びせかけるミドルテンポの曲。ギターソロも個性的だ。#6は楽しげなメロディと三拍子で跳ねるようなリズムを見せるポップな曲。ギターソロはメランコリックで怪しげなオシャレさを纏い、アルバム中でも異質な雰囲気を見せる。ラストの#7ではゲスト参加の坂井キヨオシ(BOaT)がお洒落なピアノを弾くスローテンポだが明るめのナンバー。恐らく田淵ひさ子の物と思われるエモーショナル全開なギターソロやラスサビの裏で暴れまわるギターも聞ける。

 

ガールズポップが愛される理由の一つとして、心地よさがあると思う。もちろんアーティストごとに個人差は大きくあるのだが、女性の声の方が男性の声に比べて濁りが少なく、ストレートな歌い方をした際に引っかかる部分が少ないからだ。Catch-UpのVo.マリモもストレートで飾り気はないが心地よい歌声であり、さらに心地よさを追求したこのサウンドである。それはもう、たった7曲を永遠に聞き続けるだけで生きていける永久機関に変身したくもなるというものだ。ジャパニーズ・ガールズ・ポップの脈々と続く歴史の流れの中に、確かに存在するバンド、Catch-Up。是非チェックしてみてほしい。

 

(ちなみに作詞作曲、ギターを担当していたミナコはminakumari名義で現在はシタールを演奏しながらシンガーソングライターとして活動中。心地よさを追い求めた結果なのだろうか。)

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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