disc review無骨な楽団が発信するクール・チャイナ

shijun

Dear Boy, I Wanna Be Your GirlfriendHedgehog(刺猬)

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北京を中心に活動するスリーピース・バンド、Hedgehog(現地表記:刺猬)の2015年リリースのEP。とはいえ、表題曲などは過去のアルバムに収録された曲の再録のようだ。(少なくとも表題曲は取り直しがされている様)ニルヴァーナ、ラモーンズ、ジーザス・アンド・メリー・チェーンなどの影響を公言し、グランジを基調としつつオルタナ、シューゲイザーなど色々な音楽を貪欲に吸収して居るようだ。どこか無骨でしかし太く力強いドラムをはじめ強固なリズム隊に、どこかクールなギターが至福の轟音を奏でる。Dr.Vo.の女性、Atomのキュートな歌声と、Gt.Vo.の男性、Zoのナードな歌声とを活かしたツインボーカル編成も特徴で、このEPでは2曲ずつメインボーカルを担当している。

ネオアコ、インディー・ポップファンなら「待ってました」と言いたくなるイントロからはじまるポップな表題曲#1。軽快でお洒落でキュートなインディーポップナンバーに仕上がっている。間奏ではギターが好き放題ノイズをまき散らしまくりそれがまた爽快である。#2はシンセの打ち込みと硬質な轟音オルタナサウンドを融合させた6分ほどのオルタナ・ナンバー。ドラムもポップさに徹して大人し目だった前曲とは打って変わって力強くなり、緩急はありつつも全編通して圧倒的な音圧で押してくる。ギターの音作りはどこか北欧のオルタナのようでクール。しかし突然現れる「ハイハイハイ!ハイハハイ!」や後半のスキャットなど、クールなオルタナロックの中にもキュートなポップさが上手く融合されている。打ち込みもギターもノイジーに暴れまわりAtomが吠える4:00あたりの展開は必聴。Zoが吠えるように歌う#3はスパスパと切れ味強いドラミングがノイジーなギターを切り刻むように展開される、ローファイな曲。#2ではクールに要所でノイズを決めていたZoも、この曲ではやりたい放題。アウトロ後の20秒のフィードバックノイズ、ありがとうございます。#4はストリングスを導入した切なく虚しい曲。Zoのダウナーな歌声には涙を誘われるし、ストリングスとアルペジオの絡みもどこか物寂しい美しさを放っている。アルバムの再生を止めて束の間の静寂を得る瞬間、そこにはなんとも言えない余韻が広がること必至である。

中国国内最大のインディーズレーベル、「Modern Sky(摩登天空)」に所属し、レーベル主催の音楽フェスでも何度もメインアクトを務めるなど中国国内のインディー・シーンにおいては欠かせない存在となっている彼ら。USツアーなども果たしているが、来日公演はまだ果たされておらず、日本での知名度は残念ながら十分とは言えない状態である。そもそもシーンとして日本人にとっては馴染みの薄いシーンであるとは思うが、たまには隣国に思いを馳せてみるのは如何だろうか。そのきっかけには、このEPを。

 

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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