disc review落ち行く夕日の叙情と、迎える青天の爽景

tomohiro

Unfinished Landscape5pm promise

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滋賀の5人組叙情系ハードコア、5pm promiseの自主制作1st e.p.。このバンドにおいて特筆すべきは、クリーンの伸びの素晴らしさ、シャウトの十分な歪みっぷりと音圧、そして楽曲を彩る、希望を感じるキャッチーでスカイハイなフレーズである。ニュースクールハードコアというジャンルにおいて、しばしば感じてしまうのが、安っぽいギターリフと大して叫べてもいない物足りないスクリームボーカルによるバンドの”量産感”だ。それはすでにこのジャンルがShai Huludなど、初期のバンドによってスタイル、音像がかなり完成に近い形に運ばれていたことにあるだろう。2003年作の時点で、Shai Huludは重厚ながらもクリティカルにキャッチーなギターリフにパワフルなスクリームボーカルを擁し、メロデスからの影響を感じさせながらも、独自の立ち位置を獲得していたように思う。だが、それはともすればIn FlamesArch Enemyなど、シーンに大きな影を落とすメロデスバンドのコピーにしかならない危険も伴う危ういポジショニングだった。

キャッチーであることは大きな武器であるが、それをむやみに多用すれば、薄っぺらい聞きやすいだけの楽曲になってしまい、バンドとしての魅力はガクンと落ちてしまう。楽曲に奥行きは必ず必要であり、何度聞いても新鮮さを見出せる楽曲は、たとえ10分あろうが、デスボイスが終始飛び交おうが、何の苦もなく聞き続けることができる。キャッチーを武器にするジャンルにおいて、武器とも、毒ともとなるのが、まさにそこの絶妙なさじ加減なのである。そしてその危ういな綱渡りを見事に渡りきったバンドのみが、そのジャンルにおいて、生き残り、名前を残した。

 

5pm promiseは、キャッチーで叙情的なギターリフやシーケンスフレーズと、Underoathのようなパワフルで骨太なバンドアンサンブルを平行棒の両端に掲げることで、危険な綱渡りをやってのけている。#1から#2の流れがたまらない、ピアノの美しいフレーズからなだれ込むタッピングフレーズには思わず胸が熱くなる。また、アルバムを通して、テンポを落とすことによって生み出されるブレイクダウン的な緩急、絶妙に飽食になる直前で切り替わるスクリームボーカルとクリーンボーカルによって、隙を見つけては滑り込んでくるホープフルな空気感を上手くまとめ、”キャッチーに対する飽き”を感じさせない。個人的なオススメは#2 “Reflection”、#5 “Believing Again”で、どちらも若さに溢れた叙情系ハードコアらしさ全開であり、スクリームまみれなのに爽快感、清涼感すら感じる。

要所要所に挿入されるギターリフにセンスの光るバンドだと感じる。割と弾き込んでいる割にスッと耳に馴染むギターを弾くバンドで、じっくり聞いてみると「あ、こここんないいフレーズ弾いてたのか。」となる感じが楽しい。個人的にすごく好きなギターを弾く、The Winking Owlのギターリフを聞いている時と近い、痒いところに手の届く感じは爽快。無駄なくスッキリと終わる楽曲の長さもリピートに拍車をかける。耳から心に届く、熱い感情を。

 

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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