disc review輪郭と情景、走り抜けるならば空は蒼く

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night and dayMorbid Sloth

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2008年結成のメロコアwithエモーショナルギターロック、Morbid Slothの1stフルアルバム。UNCHAINthe band apartsusquatchなどに代表されるようなクリーン・クランチ寄りの耳触りのいいカッティング、アルペジオを主軸として、16ビートでメロコア的疾走感を加味するドラムワーク、時として現れ楽曲にフックをかける変拍子にメンバー全員がボーカルをとるシンガロンスタイルが重なることによって、爽やかなエモーショナルに溢れたバンドサウンドを実現した。

前述した3バンドやhealaWrong Scale等、こういったジャズ、フュージョンやボサノヴァなど、ロック以外の周辺ジャンルを大きく取り込み、JPOPとしてメロディアスに表現するバンドは、2000年代後半頃に次々と現れ始め、現在でも一線で活動を続けるバンドが多い。逆に行ってしまえば、自分のリサーチ不足なのかもしれないがここ最近、こういった音楽性で有力なバンドは現れていなかったように思う。彼らMorbid Slothは停滞気味であったこの場所に新たなる風穴をあけるに相応しい新世代型のミクスチャーロックバンドであると言えるだろう。

 

もっとも、おそらく彼らは方法論としてこういった先人たちの手段を用いているだけであって、根本に流れているのは、90’sエモやポストロックだろう。開放弦多用のハンマリングフレーズや転がすような音色のアルペジオは、「まさに」といった具合だ。そういった視点から見れば埼玉のRIDDLEや千葉のSeptember Decemberなどと合わせて、エモリヴァイバルインフルエンスのバンドだと言えるかもしれない。

 

 

時折挟まれるショートチューンによって、アルバム全体の語調を整えながら、飽きさせない爽快感を持続させる構成である。MVにもなっている彼らの代表曲#2 “after conflict”はメロコアの疾走感とポストハードコアをセンスよく組み合わせた楽曲で、サビで視界が広がるような清涼感が痛快という感覚に近い。他にも、落ち着いた印象のカッティングとアルペジオリフによるイントロからの、走り出すサビがシンガロンを誘う#3 “one progress”、弾き語り調の幕開けやスキャットがシックな雰囲気を醸す#6 “camouflage”、これぞエモというような大きなリズムの取り方が印象的な#8 “weather”など、複数の顔を見せながらも、どの曲でも絶対に「走り出す」リズムが一層に気持ちいいアルバムだ。

この手のバンドとなると、下手をすれば、耳触りがいいだけで終わってしまうという危険もある。だが、Morbid Slothの持つ、そういった不安要素を全て払拭できる突き抜ける爽快感は、今の冷たく抜けるように澄んだ冬の空にもよく合うだろう。

 

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