disc review過ぎ去りし虚無を再び迎え撃つ時、音楽はどこまで蒼然と居られるか

shijun

homeworkmy ex

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京都のインディー・ロックバンド、my exの1stアルバム。エモやパワーポップ、オルタナにシューゲイザーといったジャンルに影響を受けた清涼感のあるサウンドながら、ナードなルーザー気質から来るふらふら感も強く、同郷で仲も良く音楽性も近いbedなどとは一見同じようで、実は全く違った魅力を発しているバンドである。

儚い美しさ全開のコードワークで魅せる、インディー臭全開の轟音ギター(同郷のくるりへのオマージュも含まれているのだろうか)が始まりを告げる#1「UNLUCKY」。「勝ち目はないから」という歌詞が印象的。彼らのルーザー気質二分程度でありながら様々な展開でこちらを驚かせつつ、彼ららしいエモーショナルなサビも聞かせてくれる#2「もうこんな時間」。セルフタイトルの#3「my ex」は、パワフルだが浮遊感もたっぷりな轟音リフがひたすら気持ち良く、彼らの魅力の詰まった楽曲と言えるだろう。ニューウェーヴ、ポストパンクチックな不穏さも漂わせる#4「サテライト」。#5「ワードファインダー」はパワーポップmeetsシューゲイザーといった塩梅で、00年代の邦楽ロックムーヴメントの真っ只中でプレイされていてもおかしくないぐらいなのだが、やはりどこかナードでインディー気質なのがまた愛らしい。美しいアルペジオを中心としたインスト曲#7「テーブルトーク」の後は、拳を突き上げること必至の珍しく抜けたフレーズの現れるパワーポップ#8「ホームワーク」。

人懐っこさがポップネスであるのならば、彼らの音楽はポップと言い切れるかもしれない。エモ由来としてもヘナヘナなVo.ヤングパカパカ(この名前からも異彩を感じ取ってほしい)の歌声も、丸みを帯びたどこか人懐っこいギターの音も、時折見せる抜群のコードワークのセンスも、いまいち抜けきらないメロディも、全てが愛おしく心を揺さぶってくるのだ。京都インディーロックシーン愛好家はもちろん、そうでない人にも是非聴いてほしい一枚。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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