disc review目眩くファンタジックサウンドマジック、虚しさと共に

shijun

メクルメクセカイメカネロ

1999年結成、2007年解散の女性ボーカルロックバンド、メカネロの2005年発売の1stアルバム。下北系オルタナギターロックの流れを汲みつつも、その攻撃性を幻想性に転化したような音楽。ポストロック的でもあり、ニューウェーヴ的でもあるが、基本としてはポップに仕上がっているのがまた面白い。シンセサウンドの取り入れ方など、ややストレートになったトルネード竜巻と言った趣もあるかもしれない。ボーカルの歌声はクラムボン的か。

#1「蛍光浴」。イントロ、浮遊感と共に掻き鳴らされる音の壁に身を委ねていると、突如その壁を割くようにVo.大森まり子の透明だが切ないウェットさを持った歌声が現れる展開は、シンプルながらも確実に聞き手をメカネロの世界に引き込んでくれる。。#2「カーテンコール」。ルート弾き主体のベースとシンプルな8ビートを刻むドラムを下地に。シンセとリードギターが自由に踊り浮かぶ。開けた空気ながらメロディはウェット。Vo.が重なるパートも面白い。ゆっくりゆっくりと積み上げる心地よいサウンド。いつまでも聞いていられる楽曲である。#3「ようこそ」は切れ味鋭いギターと緊迫感溢れるビート、サイケデリックなメロディ、リフが楽しめるニューウェーヴィーな楽曲。ハッとするような展開がどんどん押し寄せ、全曲までとは違う一面を見せてくれる。終わり方も素晴らしい。#4「ブルーサマー」は静を生かしたポストロック的な楽曲。ベースがかなりいい味を出しており、めちゃくちゃ心地よい。男性ボーカルも飛び出す。終盤は轟音ギターとシンセで多幸感いっぱいの展開も現れる。PaperbagLunchBoxなどと仲が良かったのもなんとなくわかる。

軽快なギターフレーズの中で、心地よくも独特なフレーズを鳴らすシンセが印象的な#6「スルー」。終盤のオシャレでエモい展開も良い。この曲もベースが印象的で、あっさり目のパートでもグルーヴィーさを見せつけている。Vo.も時に軽快に時にエモーショナルにと、巧みに歌声を切り替え曲の世界観をより確固なものにしている。ノスタルジックで虚しくも優しいメロディが印象的な#7「突如 空いていた広い穴」。優しい雰囲気ではありつつも、プログレッシヴな楽曲展開や意外なフレーズも聞け、彼女たちの音楽的な一面の主張も感じる一曲になっている。ファンタジックなギターソロも必聴。パルス音風のフレーズのイントロが印象的な#9「ハローアワー」。優雅で開けたポップさを持つサビ裏拍で鳴るシンセも印象的。ギターソロの入りでハッとさせるのもさすが。#10「部屋の中」。静のパートとそれを引き裂くような轟音ギター。その轟音がまた攻撃性と多幸感に全振りしたような、ギリギリのところを付いてきているのがグッド。終盤の展開には思わず虚を突かれる。素晴らしい余韻のある一枚である。

筆者はこのバンドの活動についてあまり詳しくはなく、むしろたまたま聞いた「カーテンコール」があまりに衝撃的でありすぎた故にほぼ無知識からこの文章を書き上げたので、詳しいことはわからないが、2000年代という時代だからこそ生まれた音楽であり、時代すぎたゆえに埋もれてしまった悲劇のバンド、という印象を受けた。FLEETやSleep Warpに比べるとロック過ぎたし、PaperBagLunchBoxあたりに比べるとポップ過ぎる感じもある。何より、それらのバンドもまた、それほど日の目を浴びなかったことから考えても、2000年代とはなんとも贅沢な時代であったのだなと思ってしまうのは私だけだろうか。バンドは解散して久しいものの、Ba.林英樹はfhánaの全曲の作詞を担当、Synth.柏井万作は大手ウェブメディア「CINRA.NET」の編集長として、フィールドを移しつつも活動を続けている。

 

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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