disc review自意識を春風に乗せて、セカイと踊るおしゃべりポップ

shijun

Faster, POP! Kill! Kill!ポップしなないで

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「セカイ系おしゃべりJPOP」、ポップしなないでの1st。キーボードボーカルとドラムコーラスの二人編成ながら、J-POP的な多様な広がりを見せる楽曲に、「おしゃべり」、ポエトリーリーディングにも似たラップが乗っかった楽曲が特徴。そこにセカイ系的要素、自意識とファンタジーとサイエンスフィクションが交差した様な世界観の歌詞が乗る。その世界観を活かしたアニメPVでも話題となった。ボーカルかめがいの歌唱力、表現力がかなり高く、メロディアスなパートにおいてもおしゃべりパートにおいても曲の世界観にガッツリと寄り添った歌唱が聞けるのも特徴。

ファンタジーと現代性が交差するような#1「エレ樫」。跳ねるようなリズムの上に乗るラップ、もとい「おしゃべり」は現代的なスピード感を感じさせるも、サビメロは打って変わってジブリ映画のような手触りに。ガッツリと世界観が作り込まれた歌詞の中にも、吉幾三やPUFFYのパロディなんかも出てくる遊び心も楽しい。曲名もエレカシだし。クラムボンっぽさも感じさせる軽快な#2「ミラノ」。マーチ調のシンセも楽しい。「向かうは僕らのアパラチア」「テレビの中は悪い大人の国だ」なんて心を擽るフレーズも。ポストロックっぽい細かいフレーズが心地良い#3「ロケットダンサー」。Vo.かめがいのキュートでエモーショナルな歌唱が映えるAメロ、Bメロに対して、男女ツインボーカルで温度の低いポエトリーが聞けるサビ、この対比が超クール。だいぶヒップホップ寄りのラップも顔を出すダンサブルな#4「コトリズム」。ラストの情報量たっぷりな展開は必聴。最後はファニーなボーカルが耳を引くちょっとジャジーな#5「早く帰りたい」。コミカルな空気感の奥にちゃんとシリアスなメッセージが眠っているのも見事。

バンド名やキャッチフレーズから受ける印象に惹かれる人は勿論のこと、それ以外の人にも訴求しうるポップセンスを持ったバンドだと感じた。世界観ががっちりとしているものの聞き味は意外と軽めなのも良さである。是非一度手に取ってみてほしい。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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