disc review明滅を追う、新しき時代の一投足

tomohiro

DemoVivre Sa Vie

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突然ですが、みなさん、skramzという言葉知ってますか。僕は、bandcampでエモヴァイオレンスとかをタグで探している時に見かける言葉だなー、なんかその辺の周辺ジャンルの名称なんだろうなぐらいの認識だったんですが、いい感じの回答を見つけました。

曰く、”Since the early 2000s, the term “Screamo” rose into the mainstream and has controversially been used by many publications and listeners to describe modern Post-Hardcore and Melodic Metalcore bands. The term “Skramz” was thus created a to avoid confusion with bands commonly mislabeled as screamo. “(引用元)とのことで、なるほど、00年代以降のいわゆるSAOSINみたいな”メロディックメタルコア”(僕は初めて触れましたがすごく的確な表現だと思います)がscreamoと呼ばれるようになり始めて、本来のemoの派生ジャンルだったscream + emo = screamoという言葉の意味が薄れて来たので、そういったemo由来のscreamoをskramzと呼ぶことにしようという流れがあったみたいですね。起源が席を譲るのはなんか本家がどうとか元祖がどうとかみたいな話ですが、そもそも本来の意味でのscreamoはべとべとのオタクジャンルなので、仕方ないと言ったところでしょうか。なるほどと思ったので、今後このサイトでもscreamoとskramzは使い分けて行こうかなと思います。勉強になりました。

 

さて、そんなskramzの一バンドである、Vivre Sa Vieの紹介です。このバンドは、僕が今まで存在を知りながらいいレーベルすぎてほとんど人にも言わず一人でこそこそ楽しんでいた、Adorno RecordsというイギリスのDIYレーベルがカセットを取り扱っています。ダウンロードはフリーです。つい最近、このレーベルと通販のやり取りがあり、買い物をまとめるべくリリース作品をかたっぱしから聞いていた時に見つけた素晴らしいバンドです。もういくつか虎の子的なオススメバンドがあるので、今後紹介していくかもしれません。

このバンドのいいところは、北欧激情の聖地スウェーデン出身でありながら、北欧激情でないその音楽性かなと思います。もちろん、北欧激情なひんやりしたアルペジオも登場しますし、基盤が北欧なのはわかるんですが、そこに乗っている味付けが、ドイツとかイタリアみたいな大仰さや、USよりの乾きも感じさせるハードなスタイルで、そこの組み合わせはありそうでなかった感じがしてとても面白いです。

#1 “Together, always”はモロUS激情なドラムフレーズとそこに続くベース、ギターのハードなフレーズ。というかこれ知ってる人は全員わかると思うんですが、もはやカバーレベルでLa Disputeなんですよね。もちろん、かっこいいのでなんの問題もないです。そしてそんな乾いた雰囲気を漂わせて#2 “War”はなんとも陰惨なコード進行のサッドスクラムで、この辺りのコード感は日本の激情と共通のルーツがありそうです。そもそも日本のバンドも好きかも、後半の展開とかkillieを彷彿とさせるし。そして#3 “Forever”はぐっちゃぐちゃの喉壊しそうな叫び方が初期Suis La Luneを思い出させますね。アルペジオの多分開放弦とかあんまり使わずに単音弾きで音を紡いでいく、まだ荒削りな感じも結構愛おしいところ。#4 “Mothers-Daughters”は言うまでもない、北欧激情アルペジオ。だいたいVia Fondo。そこからブラストぶっ込んで激しめに動く感じは今時っぽくていい。#5 “Sinkng, still sinking”はカリカリの音でパキパキトップスピードを攻める感じは初期の激情のDIY感が伺えます。そして#6 “Shame and disgust”は不穏なノイズ、気持ち悪いベースリフにRepublic of Dreamsbeau navireばりの筋肉質なブラストが突っ込まれ、混沌の様相。そしてLoma Prietaから、”Love”を思い出させる強烈なノイズで幕引き。曲中に所々挿入される、映画のセリフの録音もまたそのジャンルへのリスペクトがあって最高ですね。

 

というわけで、これ本人が見たとして喜ぶのかってくらいバキバキに他のバンドを引き合いに出して語ってしまったんですが、なにはともあれ、激情のいろんな年代、いろんな地域を横断した経験値で今をやっている感じはめちゃくちゃ愛せると思うんですよね。そして全曲2分程度というスピード感も最高。カセットは海外通販で結構大変ですし、お布施にちょうどいいのは本人たちのbandcampのNYP。ぜひ買ってみてください。あと、全体的に厨二感漂うネーミングや歌詞のメッセージ性は北欧センスで好きだな〜。

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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