disc review若さに任せた感性とエネルギーで、ネオクラシカル新時代へ

tomohiro

The ObserverArtificial Language

ネオクラあるある:古臭い

 

というわけで、今回はなかなか喧嘩売りめな文句を冒頭においてしまったが、カリフォルニアの若き6人組Tech-ネオクラとでも呼ぼうか、Artificial Languageのデビューアルバムのレビュー。

彼らの音楽はネオクラシカルの流麗なメロディメイキングと今時のキメ+緩急で魅せるスクリーモ的な要素を融合させた、新世代的音楽である。ギターをメロく弾くスクリーモと言われると思い浮かぶものがある人は多そうだ。僕は、過去にレビューしているTides of Manや、Dance Gavin Danceをはじめ、Blue Swan Records周辺のSwan-Coreと呼ばれるジャンルが想起されるわけだが、

 

彼らArtificial Languageがこれらと決定的に違うのは、下敷きがスクリーモではなくメタルだからである。というか、結局Techではあるけどネオクラじゃねこれ?くらいの清々しさがある音楽なのだ。

ツインリードをうまく生かし、きちんと自分たちのカラーを持って曲中を縦横無尽に駆け巡るギターと挑戦的なリズムワークで攻めるベース、ドラム。さらには流れるようにピアノソロを弾きこなすキーボーディスト。ここまで揃ってしまえばその時点で音楽の良さの保証はされてくる、それがメタルというジャンルの良いところでもあり悪いところでもある。つまり、多くのメタルにとって、それがデスであろうとなかろうと、音楽の全体的な完成度を決定づけるのはボーカルの力だということである。

こと、楽曲において楽器の情報量を増やしてしまいがち、楽器先行しがちなメタルというジャンルにおいて、それを乗りこなすボーカルの存在は非常に重要だ。In Flamesはやっぱりアンダースフリーデンのボーカルがその音楽自体の価値を強く高めている気がするし、最近だと、Peripheryのスペンサーソーテロとかにもそれは言えるだろう。彼らは自分のカラーをしっかりと情報量の多い音楽に乗せて、その音楽の価値を何倍にも高める、非常に創造力のあるボーカリストだと思う。一方で、ボーカルに恵まれなかった時、その音楽はなんとなく物足りなく感じる時もある。最近のテクデス、djent界隈では結構それが顕著で、Veil of Mayaも、The Facelessも、期待していたThe HAARP Machineも、新ボーカルなんだか物足りないなと思わざるを得ない。(この場合は旧ボーカルの存在感の大きさや、好みなどいろいろな条件が絡むことは申し添えておく。)

というわけで、楽器主体の音楽と思われがちなメタルミュージックだが、ことその価値を大きく左右するのがボーカリストの力だと思うわけである。

で、今回レビューするArtificial Languageの話に戻るのだが、この話の流れから察されるように、ボーカルがすごくいい。ゴシックで耽美的な香りを持つTech-Metalという非常に乗りこなしにくいバックミュージック相手に臆せず、実に挑戦的に歌メロを乗せに行っており、その力強さでこのバンドの均衡は絶妙に保たれていて、それが頭ひとつ抜けた洗練みを感じさせる。

#1から#4まではギターを強くフィーチャーするトラックが続き、ギタリストの実力を存分に堪能できる内容。そこから少し空気を変えて#5 “The Silver Cord”では、荘厳なピアノとハープの音色が広く空気を震わせるミドルテンポのバラードが繰り広げられる。後半に向けての音の厚いエモ・バーストにも似たパートは、ただメタル一辺倒だけではなく、スクリーモなど周辺のジャンルを貪欲に吸収した若い感性のほとばしりを感じる。インターバルのピアノインスト#6をはさみ、後半はCirca Surviveのようなサイケデリックな香りを纏うスクリーモを感じさせる楽曲が続く。#10 “Mazes”は往年のBorn of Osirisを彷彿とさせるシンセフレーズ+アトランダムな刻みやシンセとギターのトリプルリードなど、djent方面へのリスペクトを彼ららしいTechネオクラ色にアレンジした意欲作。そして、#11 “Turn off the Pictures”は8分超の大曲でゴージャスに歌い上げるというA/B面仕様の全11曲。

ちなみに僕が彼らを好きなのは、楽曲の良さもあるけど、「音大でメタル好きなオタクをかき集めた」みたいなメンバーの佇まいで、そこから染み出す純粋な音楽へのハングリーさが彼らの音楽の根底をさせているような気がしている。

 

来月に新譜が出るので結構楽しみにしている!

 

アルバムのリードトラックだと思っている曲。彼ららしいメランコリックさとメタル感の調和が見事

 

イングヴェイも黙るど正統早弾きのイントロが露骨すぎて気持ちいい!

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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