disc reviewmail interview colormal meets cllctv.

tomohiro

Tomohiro:話を少し変えるんですが、イエナガさんの音楽観を見ていて、思った点としてあったのが、引用・サンプリング文化に対する積極性というか、敬意というか。そう言ったスタンスが、単なる”バンドマン”というよりは、ヒップホップとかエレクトロニカとかの”トラックメーカー”に近い感覚を感じたんです。

このようなスタンスって、バンド形態では無く、ソロアーティストとして音楽を作っているような部分と関係があったりするんでしょうか。

イエナガ:バンド音楽、とりわけ日本のロックって参照元を大きな声で語らないじゃないですか。オリジネーターであることを強く求められているというか。

音楽誌のアルバムインタビューで元ネタは誰だとか、まあ言わないですよね。仮にそういったリストを挙げても、何をチョイスするかで“音楽偏差値”が問われてるから「去年のアニメのOPに感動して!」なんてありえないでしょうね(笑)。

Tomohiro:それはきっとみんな感じていることですね。今ならいいかなって思いますけど、自分がバンド始めた頃はメンバーみんな9mmが大好きです!とか書けなかった。

イエナガ:そういう風潮に僕は「みんな一度はブラックマーケットブルースで狂ってたはずやのにな」って思うんですよ(笑)。

で、僕もそんな風潮を鵜呑みにしてオリジネーターでありたいと少し意固地なところがあって。でも今回の製作期間でレーベルオーナーからもっと健康的に色んな音楽を取り込むことを促され、半ば嫌がりつつ従ったらとてもいい曲が出来て。製作中期に出来た「花に嵐」がそれなんですが、その辺りからマインドが変わりましたね。

それこそトラックメーカーやヒップホップは引用・サンプリングを貪欲にやっていて、その上でオリジナリティを体得していってる。じゃあ、バンドマンだってそうあろうよって思うことが増えたんです。

Processed with VSCO with av8 preset

Tomohiro:結局インプットを増やさないとアウトプットで出しにくいですよね。サンプリング文化ってすごく合理的だと思うし、これは別にサンプリング元を軽んじてるわけではない。良い文化だなと思うし、この柔軟さはこれからもっと積極的に取り入れられるべきでしょうね。最近だとコンピレーションがどうとかで少し陰が差した話もあったりしましたが…。

「花に嵐」はフジファブリック的というか、作り込まれた内面がうまくマスクされてシンプルに聴かせている楽曲だなと思います。具体的には制作でどういったところで変化があったんですか?

イエナガ:コンピレーションの問題もあったし、それとは少し性質は異なりますがトラックメーカーの方のPVが盗作されたかもしれないって問題もありましたね。そのトラックメーカーの方が、騒動を収めるために書いたブログに「先人の肩の上に立ち、遠くの景色を望まんとし、作品を作る権利は誰にでもある」とおっしゃっていて。僕は本当に、それに尽きると思います。

「花に嵐」はそれこそ「On the Safest Ledge」のドラムパターンをまず、まるごとサンプリングしてみたことから景色がブワッと広がって。それこそ巨人の肩の上に乗ったような気持ちで。こんなにガッツリと人の名曲をコピーをしてみようというマインド自体、今までの自分ならあり得なかったことなので、そこが個人的ブレイクスルーでした。

この曲はコンセプトとしてロードムービーのような曲を作りたいと思って制作を進めていて、ラストのサビ前にピアノだけになる部分だけの状態から広げていって。それこそ今までの僕なら、フジファブリックの様なやるせなさを孕んだメロディにしていたけど、心境が変わって自信があったからサビのメロディはすごく洋楽的なアプローチになったんだと思います。

Tomohiro:ここまでの話を踏まえてなんですが、改めて、イエナガさんは自身のことを、バンドマン、もしくはトラックメーカーどちらの精神性を持ったアーティストだと考えていますか。

イエナガ:まさに自分の現状と同じで、バンドマンの心が強いトラックメーカー… みたいな精神でやってると思います。そんなに大げさなものでもないし、こういう気持ちの人は今たくさんいると思いますけどね。バンド形態ではないからプライドで固めてる場合じゃないってのもあります。

Tomohiro:バンドの話が出ましたね。これについてやっぱり気になっていたことがあって。バンド編成でcolormalを演奏するような予定はありますか?根幹としてギターが鳴っていて、ベース、ドラムがある音楽だからやっぱり生のライブを見てみたいなという気持ちがあって。

イエナガ:僕もね、ライブを見たいです(笑)。

「大きな怪獣」なんかは小さなライブハウスで冒頭のハウリングを録ったんですけど、なんならそのまませーので演奏したいと思って作りましたし。

…そう思うくらいなので、やっぱりライブはいずれやりたいなって思います。もし演奏するなら再現に拘らず、ライブとしてのアレンジやライブの為に曲を作ると思いますが。まだ体制を模索中です、レーベルオーナーもそれとなく背中を押してくるんですけど。

Tomohiro:これに関しては質問しておいてなんですが、簡単に動けることでは無いように思いますね…。バンド編成は単純なソロの延長ではなく、自分じゃ無い人が各パートを演奏して成り立つものですもんね。でもそこを越えていつかバンドでライブをすることがあれば、ぜひその場に居合わせたいですね。

今、colormalという音楽はやっぱりインターネットの住人のもので、現場と言われる場所からは残念ながらまだ少し遠い位置にあるように感じますし。

イエナガ:性格がキツい訳でもないし、ライブ演奏が絶望的なほど演奏スキルがない訳でもないんですけどね。こればっかりはなかなか腰が重くて。現場にもっと知られたい気持ちがいずれ自分をステージへ駆り立てるんや!と思って今は胡座かいてますね、完全に(笑)。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

このライターの記事を読む