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Tomohiro:音楽の制作についても聞きたいことがあります。本作に収録されている楽曲って、どの楽曲も多分トラック数がすごいんじゃないかなって思っていて。いろんな音や楽器がサンプリングされているし(夢みる季節の4:36あたりからのメロディの裏で鳴っているのは掃除機…の音ですか?)、密度がすごい。多分隠して入れ込んだようなこだわりどころとかもたくさんあるんだろうなと思うんですが。

イエナガ:あ!4:36からのところはシンセサイザーと電車のインバーターが加速する音をピッチ編集して重ねています。テーマが電車にちなんでいるのでそういったサンプリングをまぜこんでいて。

Tomohiro:もっと手が込んだ作りだった…。テーマに忠実であるためにそこまでやるあたり、やっぱりオタク気質がありますよね(笑)。もちろん悪い意味ではないです。

イエナガ:オタクじゃないとこんな曲作ろうとも思えなかったでしょうし、間違いないですね。

トラック数は、入門用無料ソフトで作った関係で36トラックまでしか入れられなくって。パソコンのスペックも限界になるくらい詰め込んでいて、マスタリングの時は作業時間とマシンの冷却時間が半々くらいだったりしました。

あとこれは、こだわりどころではないかもしれませんが、パソコンを除けば5万円くらいで僕の録音環境はおおよそ再現できるんですよ。だからもっと音楽作ってみたいなって気持ちを後押しできればいいなって思います。そういう意味でも「指標」になってほしいと思ってつけたアルバムタイトルだから。

Tomohiro:5万は正直驚きました…。レーベルインタビューの機材も見てたんですが、DAWがCubaseの無料版なのも力技すぎて笑っちゃいました。音の広がりやそろぞれの音源の音の良さ、そういった要素ってとてもこの制作環境から生まれたとは想像できなくて。これはかなり始めたい気持ちを後押しできるんじゃないでしょうか。

DOIMOIってバンド知ってますか?このバンドもイエナガさんと同じように無料版で録音・ミックスまでしちゃってる時代もあって、プラグインがそんなに挿せないじゃないですか、無料版って。どうしてるのかと思ったら、一回書き出してまた挿す、らしいです 笑。結局のところ、機材はもちろん大事だけど、そこを克服できるものはある、ということですよね。

イエナガ:確固たるメソッドや経験がないから、もう探り探りですよね。ただ感覚的にいい音になる様にトライ&エラーしまくればなんとかなるよ、って見本にしていただけると報われるのかな。

僕はプロのエンジニアが見たら泡を吹いて倒れるのかな、って思う音の処理をしたりしますし。プラグインも深刻なレベルで数が足りないから、僕もリズムパートだけ書き出しちゃうとかやりますよ。DOIMOI… の名前は初耳ですね、シンパシーも感じるのでちょっと聴いてみます。

Tomohiro:制作について、もう1つ。これを読んでくれている人のために、よかったら、楽曲に隠したこだわりどころを聞かせて欲しいです。

イエナガ:隠して入れ込みたかったというよりも、僕の技術が拙くて隠れてしまった音が多いと思います。「鎹」はラストのサビだけブライアン・メイみたいなハモリのギターを入れてるんですけど聴こえなくなってて…(笑)。

でも意図せず隠れたことでコクが出たというか… カレーからりんごの匂いはしないけど、加えた甘みがカレーをよくしたような。何言ってるかよく分からないですね。

Tomohiro:今聞いてるんですが、一瞬、ふんわり来ますね。甘いトーンのギターが。まさかコインで弾いたなんてことは流石に無いですよね?

でもそうやって密かに入れてる部分、聞こえなくなった部分ってなくなると何か寂しいから入れるわけですよね。そういう部分の丁寧な作り込みが、音像の完成度に貢献している部分は間違いなくありますよ。スティーブアルビニが壁に向けてマイク立てて録音する話じゃないですけど、空気感の広がりみたいなのは、そういう密やかな要素に集約されているんじゃないでしょうか。

イエナガ:そのまさかで五十円玉で弾いてます。もうこんなのピックで弾くのとなんら変わりないんですけど、大喜利みたいな気持ちですよね(笑)。

あ、そうだ!スティーブアルビニ的とまでは言えないんですが、今作全てのドラムトラックは一旦スピーカーから出力したものをマイクで拾って、それを打ち込みと重ねて空気感を出しました。僕とレーベルオーナーはそのトラックを「アルビニ」って呼んでましたね。しょうもない、意味もなさげなことを30トラック積み上げると自分の色になるんですね。

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Tomohiro:五十円玉!! さすがにそこまでいくと笑っちゃいますよ(笑)。絶対誰も気づかないでしょっていう(笑)。

ギターで言うところのリアンプ的な作業をドラムで行ってる、って感じなんですかね。でもそれ結構目から鱗のテクニックです。僕も機会があれば盗ませてもらおう。アルビニって呼んでるのもいいですね、シンパシーを感じてしまう。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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