disc reviewcllctv. 企画 bookshelf vol.5 ライブレポート

tomohiro

ophill

 

夜の入口に適した音楽とはなんだろうか。それも賑やかな夜への。
そこにはきっと少しのひょうきんさと、確かな熱と、浮かされたような曖昧さが含まれているはずで、まさにophillの音楽はそこに適したものだと言えるだろう。
“am5”で幕を開けた彼らの演奏。シンプル故に楽曲の広がりを妨げず、それでいて帰ってくる場所になるリズム隊。どこまでも伸びやかなリードギターは夜の稜線を描くように、紺色の尾を引く。そしてそこに思わぬ人間味を落とし込むのが、Vo/Gt. 川上氏の役割である。

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夜の入口への余韻も忘れさせるような、不穏で落ち着きのないアルペジオが始まったらそれは”desert song”。ひょうきんであることと、楽曲のサイケデリックさが相まって不思議な親しみを持たせるのが、彼らophillという音楽で、その根幹は、彼らのリアルタイムであった、ポストロック初期の日本のバンドシーンにあると聞いた。まさに、ロック、パンクが反映したシーンの中に不思議な軽やかさを持って導入された、『ポスト』ロック。今となっては音楽の性質よりも形状を表す形容詞になってしまったこの言葉の、とてもプリミティブな部分を彼らは伝えてくれる。

“急行待ち”は僕が個人的にすごく好きな曲で、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を思わせる、伸びやかで孤独な夜を、列車の流れになぞらえて描き出している、そんな反響するギターサウンドにしばし夢に落ちる心地になる。そろそろ夜もその全貌を現し始める頃だろうか。

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さて、そんな穏やかな余韻もほどほどに、再び彼らのひょうきんな部分が覗く楽曲たち。メロディとコードの展開が明瞭であるが故に、コロコロとその表情が変わっても、置いていかれるような感じはしない、不思議なロックミュージック。今日もまた、わずかばかり心に引っかかるハピネスを残し、彼らの演奏を幕引き。引き際も鮮やかだ!

 

1. am5
2. desert song
3. 急行待ち
4. 3000mile
5. UFO for you

ophill

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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