disc review異国の地で発展したキュートな渋谷系ポップス
SemesterLinus' blanket(라이너스의 담요)
韓国のインディーポップバンド、Linus’ blanket(라이너스의 담요)のep。現在はソロプロジェクトになっているようだ。元々日本のギターポップ/ネオアコバンドadvantage Lucyのコピーバンドからキャリアをスタートしたという経歴があり、軽快で爽やかでおしゃれなネオアコサウンドを聴かせてくれる。ジャズの素養もありそちらに接近した作品もリリースしており、純粋なギターポップ色の強いこのアルバムでも随所でその片鱗を見せてくれる。
全編にわたってスキャットで可愛く楽しいゆったりとした#1。キラキラした鉄琴のような音や、カズーのような音も現れ楽しさにさらに華を添えている。#2はいきなりインスト曲で、メロディを奏で続けるギターとフルートの絡みを中心としたお洒落で軽快な曲に仕上がっている。続く#3では透明感のあるキュートなボーカルもやってきて、待ってましたの軽快なネオアコサウンドを魅せてくれる。雰囲気はお洒落に完成されており、Cymbalsっぽさもあるか。#4はちょっと雰囲気も落ち着き、ジャジーなソロも見せてくれる。大人っぽい雰囲気だが決してアダルティにならないのは、透明感のあるボーカルと、素直でキラキラとした音作りのおかげだろう。彼らの代表曲であり、跳ねるリズムが楽しい#5ではVoも少し砕けた歌い方を見せ最高にキュート。可愛いながらも哀愁のあるメロディも相まってノスタルジーに駆られること請け合いだ。心地よいウォーキングベースも聞ける。#6はやたらムーディでダンディな男性コーラスが現れ少し驚くが、パパパ~と言う管楽器の音色と跳ねるリズムがこれまた楽しい。隠しトラック的に短めだが綺麗なアコギインストも収録。
音楽的にはネオアコの影響を大きく感じるものの、練り上げられた曲展開や芳醇なソロ、キメの多さなどはジャズ/フュージョン的であり、数々の楽器の音色を効果的に使っているところには純粋なポップスに対する関心も感じる。そういうところも含め、前述のCymbalsやadvantage Lucyなどの音楽性に近い所があり、韓国出身でありながら所謂「渋谷系」の文脈で語られるバンドの一つとも取れるだろう。日本人として、異国の地で発展したクオリティの高い「渋谷」系サウンドを楽しんでみてはいかがだろうか。彼女たちは韓国では結構売れっ子のようで、ドラマの挿入歌なども担当していたりするほどなので、渋谷系、という文化に理解が無くても、普通にクオリティの高いお洒落なポップスとしてもちろん楽しめる。