disc review今を戦う全ての人へ、その雄々しい言葉と意志を

tomohiro

Still talk about a dreamWithin The Last Wish

東京の5人組、激情影響下のニュースクール、叙情系ハードコアバンド、Within The Last Wishの4曲入りEP。雄々しく叫ぶボーカルの秘める強いメッセージ性とアトモスフェリックな空気感にはenvyの影もちらつき、確かに激情系というジャンルを通過してきたことを感じさせる。しかして、その音楽性は激情にあらず、モダンな音作りとよりメタルコアに寄せた緩急とスピード感のある曲展開は叙情系、すなわちニュースクールハードコアと呼ぶのがふさわしいかと思う。

激情系と叙情系の線引きを語るのは難しいが、個人的には、ポストハードコアかメタルコア、どちらに寄せた音像かというところと、音楽に現れる精神性とで区別している。激情系というジャンルは、悲痛で胸を掻き毟るような重く切ないリフと泣き叫ぶような感情直下型のボーカルワークにおいて特徴付けられ、叙情系というジャンルは、クリーンでポジティブかつ、胸を熱くするようなホウプフルなリフに特徴付けられ、よりモッシュなんかの観客との協働的なパフォーマンスを重要視しているように思う。

激情系においては、envyはもちろんheaven in her armskillie、叙情系においては、2003年リリースの”Hardcore Emotion”においてそのジャンルを確立し、今なお多くの支持を集めるNaiadやファストでエネルギッシュな楽曲が特徴的なendzweckなどが主なものとしてあげられると思うので、それらを聞いた上でこの二つのジャンルの相互性を探してみると、より面白さを感じられるかと思う。

 

さて、このバンドにおいて素晴らしい点は、その両方のもつ良いところを絶妙に噛み合わせ、自分たちのハードコアとして昇華しているところにある。これらのジャンルにおいて、より原点的である90’sエモからの影響も語る彼らの音楽は、簡単に特定ジャンルへの傾倒の尻尾を掴ませない、深く、多岐に渡り入り組んだ知識によってより深化している。

ポストロックフィーリングの美しいアルペジオやアンビエントなフレーズから、メロディアスなギターフレーズによってエモーショナルな展開に引っ張り上げ、時にはメタルコア的ブレイクダウンや疾走感に溢れるビートを刻みむような動的展開を得意とし、クリーンボーカルを入れれば、歌モノ的アプローチも感じさせる。ベースは地を支えるにとどまらず、華やかに曲を彩り、アルバムを通して実に聞き応えのある作品だ。そしてなにより、明日へと向かう一歩を後押しする力強い詞は、聴く人の心をダイレクトに揺らす。

今を戦う全ての人へ、その強く、重い言葉を。

 

 

音源の購入はライブ会場、もしくはホームページから

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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