disc review軋み、共鳴し合う赤き森の言葉無き歌声
Red ForestIf These Trees Could Talk
トリプルギターを中心とした重厚な曲の組み立てと、スケール感、メロディアスでエモーショナルなフレージングを持ち味とする、アメリカオハイオ州の5人組ポストメタルバンド、If These Trees Could Talkの2ndフルアルバム。前作、”Above The Earth, Below The Sky”の時点で既にアトモスフェリックな世界観の重音ポストロックとして非常に完成度の高いものだったが、今作では、よりギター3人がそれぞれに独立した役割を持ち始め、楽曲に奥行きも出来、フレージング自体もより金属的でポストメタルと呼ぶにふさわしい音像となってきた。
PelicanやRussian Circlesなど、ポストメタルのバンドの多くは、無機的でインダストリアルライクなギターリフを重ね、建物を建てていくかのように積み上げていくような曲が多いイメージだが、このバンドにおいては、もっと楽曲自体に有機的、生物的な温度感を感じる。それは前述の2バンドがスリーピースなのに対し、彼らは3人のギタリストを擁しているところが大きいのではないのだろうか。3本のギターにそれぞれ独立な役割が与えられていることで、よりバンドの思い描く風景、情景の再現性が上がっているのだ。また、各曲にそれぞれストーリ性と言おうか、クリーンパートや轟音的なパートなど、緩急が付けられているのもこのバンドの特徴だ。クリーン、歪み、どちらのパートでも非常に叙情的なフレージングを得意とし、曲のタイトルからも感じ取れるような広大な世界観を、実に色鮮やかに描き出している。#2 “The First Fire”の冒頭のアルペジオ、それを引き継ぎつつ雪崩れ込むドゥームなフレーズに至った瞬間、あるいは#6 “Red Forest”のイントロから鳴る、掘削機械を打ちつけ続けるような破壊的なフレーズなどはまさに即死級の「カッコよさ」の塊であり、彼らの真骨頂とも言えるので、ぜひ聞いてみてほしい。また、#4 “They Speak With Knives”などでは、少しポストメタルの枠から離れたようなアプローチにも挑戦しており、新鮮味があって良い。
ポストメタルというジャンルは、そのストイックな音楽性も相まって、若干、日本という土壌には馴染みにくいもののように感じてしまうが、日本のバンドの中でも、Monoなどの叙情的なポストロックを好む人々は、ぜひ、If These Trees Could Talkも聞いてほしい。きっとお眼鏡に叶うことだろう。つい最近まで、レーベルとの契約がなく、自身らによる配信、自主制作のみの活動であった彼らだが、晴れて、Metal Blade Recordsの手によって、2015年、流通が開始された。これによって手に取ってくれる人が増えれば幸いなのだが。