disc review満点の人懐っこさを纏った異質なポップセンス
融解e.pシャークニャークス
5人組ポップバンド、シャークニャークスのライブ会場限定のe.p。彼女達が標榜するのは、「オトナ用みんなのうた」というストレンジポップス。懐かしくちょっとヘンテコなメロディと、日本人のポップス論に沿ったごった煮でやっぱりちょっとヘンテコなサウンドの組み合わせは、なるほど確かに「みんなのうた」を感じるか。お洒落ポップスの要素も多分にあり、曲名、歌詞、サウンド共にシリアスな部分もあるものの、それでもどこか人懐っこいのも特徴的。似ているというわけではないが、SEBASTIAN Xやのあのわ、東京カランコロンあたりの現代バンドサウンドポップスの流れにあるバンドとも言えるかもしれない。
松任谷由実あたりを彷彿とさせる優しく懐かしく、でもどこか現代的なルーズさも持つメロディが特徴的な#1「あれから夢の中」。ボーカルの歌声は特徴的な方ではないが、エモーショナルさを滲ませたり伸びやかに歌い上げてみたりと一曲の中でも多彩な表現を使い分けているのが素晴らしい。クルクルと表情を変える楽曲に合わせてクルクルと表情を変えていく様が心地よいのだ。気の抜けた台詞風の掛け合いが楽しい#2「歌わない人のメロディ」。Aメロや間奏で顔を出すチャカポコしたパーカッションの音も楽しく、エモーショナルでストレートなBメロ、サビとの対比でハッとさせる手法もベタながら心地よくまとまっている。#3「融解」はラフなサウンドが楽しく、ギターソロ、シンセソロも一癖あるものの、それを感じさせない人懐っこさがある。明るくなりきらないサビはなかなかビターな味わいで「オトナ用」の部分を感じるか。
基本的には人懐っこいポップスであり、何も考えずともそういうのが好きであれば楽しめるだろう。その裏でなかなか凝ったことを、ちょっと不思議なことをしているところが今世代のポップバンド、という感じである。シティポップから気取った感じや擦れた感じと引き換えに、人懐っこさとユーモアを与えたようなサウンド、という見方もできるかもしれないので、シティポップなどを愛する人にも手に取ってほしい一枚である。ライブ会場限定であるが、今ならまだ手に入る様だ。