disc review加速拡大する情感、フォークソングの最新型
LIFEハルカトミユキ
日本のオルタナティブ・フォークユニット、ハルカトミユキの2ndミニアルバム。彼女達は2015年のマニフェストとして、月に一曲必ず新曲を発表する、という宣言を行っており、このアルバムには5月~9月の楽曲が収録されている。既発曲だけではなくそれ以外にも2曲が収録されており、2015年の彼女達の攻めの姿勢が詰まったアルバムになっている。前回当サイトで紹介した1stフルアルバム「シアノタイプ」はシューゲイザー色が強い一枚であったが、このアルバムではさらに多様なジャンルをフォーキーに落とし込んでおり、バラエティ豊かになったという印象。
高らかに鳴らされるギターと響き渡るドラムが壮大さを演出する、「幕開け」を予感させる#1「肯定する」。バンドサウンド一本でここまでの壮大さを打ち出してくるのは流石と言える。前曲とは打って変わって打ち込みの#2「宇宙を泳ぐ舟」。フォークと電子音の融合と言ってもフォークトロニカ的なアプローチではなく、ダンサブルな打ち込みビートを基調としたハウス調の一曲である。同じく打ち込み中心の#3「春の雨」ではコーラスワークの壮大さと、雨を意識したかのような沈美なバックトラックが噛み合い、まるで映画のワンシーンの様な神秘的な情景を描き出す。#4「COPY」は従来の物に近いオルタナティブなバンドサウンドが聴ける。骨太なリズム隊は打ち込みの楽曲の増えたこの盤に置いては当然のアレンジと言えるだろうか。都会的なスピード感のあるサビはメロディもお洒落。かなり楽し気な雰囲気のイントロに面食らう#5「All I want」は軽快で楽し気なリズムとフォーク由来の適度に湿ったメロディとの相性が意外にもよいミドルナンバー。#6「September」はこのアルバム中最もシューゲイザー色の強いパートが聴けるナンバーで、「シアノタイプ」に収録されていてもおかしくない一曲。2000年代前半のドラマ主題歌にでもなれそうな都会的なスピード感溢れる切ないサビは必聴。緩急の利かせ方はJ-POP的であるか。アウトロもハッとさせられる。#7「火の鳥」は再び神秘的で壮大な雰囲気の打ち込みが聴けるが、焦げ付くように歪んだギターや引くほど激しいパーカッションの音などかなり攻撃的な一曲に仕上がっている。
憂いのある湿ったメロディにはフォークソングのそれを感じる物の、その表現の幅はもはやフォークソングもオルタナティヴロックをも飛び出している。良いメロディを活かすためにオルタナティヴロックという手段を選んでいた「シアノタイプ」に比べると、良いメロディをあくまで一つの構成音として活かせる音楽を作り上げている、そんなアルバムに感じた。「世界」以降方向性の徐々に変わっていく姿に離れていく人もいるのかもしれないが、個人的には肯定したい方向性である。2016年もまだまだ攻めの活動を公言している彼女達。行きつく先は何処なのか、非常に楽しみだと言える一枚であった。