disc review永遠に輝き続けるジャパニーズエモの金字塔

tomohiro

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97年結成、2001年解散。残したアルバムはセルフタイトル一枚のみだった伝説的エモバンド、bluebeard。各メンバーののちの活動であるNahtAs Meias等にもつながる原点的存在であり、The Get Up KidsTexas Is The ReasonMineralといった90’sエモ代表格のバンドと同世代を生き抜いた彼らのセルフタイトルアルバムが、昨年の期間限定の活動再開とともに再びリマスターされて流通されることとなった。僕はAs Meiasの方を先に知ったので、As Meiasをより純粋なエモとして昇華(bluebeardの方が古いバンドなのだが)させたようなバンドとして彼らを認識していた。初めて”Room 501″という曲を聴いた時、これほどにストレートに90’sエモを日本で体現していたバンドがいたのかと、涙腺を熱くし、震えたものだった。

彼らにとって、エモとは、憧れや目標ではなく、自らと同じ高さの目線にあるものだった。ポストハードコアからのさらなる派生でエモが興隆し始めたのが彼らの活動時期とほぼ同じなのだから、それは考えてみれば当然のことである。彼ら自体は、その根底にはUKメロディック、ストレートエッジ、あるいはポストハードコアといった音楽が流れていると語っており、それらは同世代のエモバンドたちが聴いてきた音楽と同じものであり、そこからエモへとつながる音楽を生み出したbluebeardというバンドは、まさにジャパニーズエモの体現であったと言えるだろう。日本でもその存在は独立的であり、当時同じようにしてオンリーワンな音楽性を獲得していたNine Days Wonderとはどちらも東京で活動しているということもあり、互いを認め合うような関係であったらしい。(その辺りの話はこちらの濃厚なインタビューで詳しく述べられている。〈CRAFTROCK FESTIVAL ’15〉開催記念! 【番外編】14年ぶりに始動するbluebeardの超貴重なロング・インタヴューをお届け | SERIES – Mikiki

 

Nine Days WonderFugaziDrive Like Jehu等のディスコーダントの流れを強く汲むもので、envyGauge Means Nothingなどとともに、その後の日本におけるポストハードコア、激情系ハードコアのムーヴメントを作り上げる発端となった。

bluebeardも同じようにして日本にメロディックエモの流れをもたらし、のちに活動するバンドたちにもその影響を受けているバンドは数知れずいるだろう。このアルバムの曲名も、あのバンドやこのバンドがバンド名に拝借していることからもそれがわかる。

このころはちょうど、北海道でジャパニーズオルタナのバンドが全盛期を誇っていたころだったが、東京ではこのようにして、より海外からの流れをセンシティブに取り入れたバンドたちが活躍していたのだ。

 

期待感を煽る#1 “Intro”からノータイムでなだれ込む名曲#2 “Room 501″、ミュートでのザクザクとした刻みとチョーキングを中心に組み立てられるハードコア的ニュアンスの強い#4 “Sleepless”、アルペジオの絡みが美しいスローなエモーティブ#5 “Snow”、#7 “Can’t Rely On”等、いずれも美麗な演奏をバックに、一歩も引けを取らないどころか全てBGMにしたてあげてしまうVo/Gt. 高橋の朗々たる歌声は稀代のもので、メロディセンスも抜群だ。どこまでも抜けていくような歌声に自然と聞き手側の気持ちまで持って行かれてしまう感覚は、なかなか日本のバンドでは味わえない。

手に入るようになった今だからこそ、改めて全てのバンドに関わる人に聞いてほしい名盤だ。

 

 

まだメロディックパンク的面の強い初期の曲も素晴らしい。(アルバムには未収録)

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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