disc review退廃と幻想の中間点、静と動の呼吸音を
dbCONDOR44
日本のオルタナティヴ・ロックバンド、CONDOR44の2ndアルバム。ジャパニーズオルタナの総本山とも言えるUK.PROJECTからのリリース。時に切れ味鋭い轟音ギターで疾走し、時には浮遊感全開のギターで幻想的な世界を創り出す。静と動とを巧みに操りリスナーを快楽の境地へと突き落とす。男女ツインボーカル編成で魅せる巧みなコーラスワークも見事。
エッジィなギターリフで幕を開ける#1「db」。焦燥感を煽るリズム隊の上にシンプルかつメランコリックなギターフレーズを積み重ね期待感を煽りつつ、サビで一気に爆音解放。シューゲイザーの美しさすら感じられる極上の轟音を聞かせてくれる。その後の静寂パートも身を委ねるには充分。幻想的なコーラスワークも最高。余りにシンプルすぎるフレーズを中心に組み立てられる#2「condortime」もヒリヒリとした速度が心地よい。続く#3「蓮華」では、無限に続く美しい回廊をさまよい歩くようなギターと消え入りそうな儚い女性ボーカルの組み合わせが、物悲しくも幻想的な風景を描き出す。まさかのアコースティックサウンドな#4「bo-go.09」。ループするアコースティックギターのフレーズが無機質なメトロノームに絡みつき、少しずつ有機性を伴ってくるサウンドは圧巻。「救い」としか言いようのないサビも必聴。
ただ「TIME」というだけのボイストラック#5から、退廃的かつスローな#6「蘭華」へ。暗闇の中で仄かに存在する光を思わせるギターがひたすらに美しい。残る二曲は意図してか8分50秒で統一されている。#7「visionary town」は悲哀に満ちたアルペジオから始まり、そのアルペジオが消えかかったところで轟音ギターが現れ思わず耳を奪われる。ボーカルが現れる頃には再び穏やかになるも、曲が進むにつれて少しずつ少しずつ熱量を帯びるサウンドが只管に心地よく、5分を超えたあたりの間奏で最高潮を迎えると言うなんとも贅沢な時間の使い方。ギターソロの神秘的な輝きを是非体感して欲しいものである。ラストの「hydrangea」は退廃的で無機質なピアノインスト。2分程度で終わるこの曲だが、最後に隠れトラック(始まる瞬間に「隠れトラック」と言うんだから間違いなく「隠しトラック」ではない。)が収録されている。アルバム中で見せた幻想的な景色が幻であったかのような悪ふざけ全開のもので、まあ一回聴けばいいようなものであるが、風通しのいいバンドの雰囲気を感じられてこれはこれで良い。(何気にコーラスワークの素晴らしさはちゃんと出ているのがまた面白い。)44th musicに改名したのち、2014年のライブを最後に活動の情報がないことが悔やまれる。Yo La TengoやSonic Youth、VELTPUNCHやSCARLETあたりが好きな人には特にお勧めしたいバンドである。