disc review切り裂く叫びと落涙は、のちの芽吹きの呼び水へ
I'll be the Bones, You'll be the soulBoneflower
本日紹介するのは、スペインはマドリードの激情系ハードコアバンド、Boneflower。そもそも知ったきっかけは、youtubeでFazerdazeとか漁ってた時に出てきた、Ordesaというスペインのカップルアコースティックデュオ。フィメールボーカルが透明感あるし、なんだかギターは激情的な匂いがするエモーショナルさがあるし、イケてるなぁと思いながらFacebookとかを探してたら、今回のBoneflowerというバンドと一緒にツアーを回る(回っている?いた?)ことがわかり、辿って聞いてみたら、なかなかクールな激情バンドが出てきたので、これは良いぞとなったという次第。
僕は、激情系ハードコアと呼ばれるジャンルは自分の中で大きく4つに大別している。一つがheaven in her arms、envyに代表され、現在も若手がシーンを牽引する国産激情、そして、The Saddest LandscapeやLoma Prietaのような、ギタフレーズに乾いた男臭さとストイックさを感じさせるUS激情、DaitroやRaeinのような、コードに泣きを込めてパワフルに、やや芝居がかっているくらいにゴリゴリ押し出す欧州激情、最後に、Suis La LuneやVia Fondo等北欧の持ち味のクサメロ系フレーズとポストロック的要素を融合させた美メロ的な北欧激情だ。とはいえこれは自分の中でのある程度の整理のための非常に大枠なジャンルわけであり、実際にはそこをもっと深く掘り下げていくとより細かいお国柄や土地柄といったものが見えてくる。例えば、欧州激情の中でもドイツは未だに激情の熱が冷めやらぬホットスポットで、初期のそれを彷彿とさせるような、荒々しいエモヴァイオレンスバンドが多くいたりといった具合にである。
そういった目を持って見ていくと、スペインという国は、ネオクラストというジャンルと非常に結びつきの強い激情シーンがあるように思う(ネオクラスト : 激情要素に限らず従来のクラストハードコアにメロディック要素だったりロックンロールの要素だったりプログレッシブな要素だったりとにかく異なるジャンル、異なる方法論を自分たちのクラストというスタイルに 持ち込んだ新しいハードコアの一種)。この辺りは3LAの専売特許に近いので、詳しい説明はそちらを参照していただければと思うが、
新旧問わず並べてみると、スパニッシュな激情の流れとして、北欧、国産激情に近いメロディックで叙情的なフレーズと、クラスト、あるいはその他のサブジャンル由来のメタリックなリフがある程度の特徴としてあげられるように思う。
さて、こういったシーンがある中で、先日来日を果たしたViva Velgradoのように、よりモダンでスタイリッシュ(というのも変かもしれないが)、洗練みのあるバンドも生まれてきているのもまた一つの流れである。
Boneflowerもまた、後者の”新しい”バンドだと言えるだろう。#1 “Land and Sand”では上述のネオクラスト的雰囲気を感じさせる情熱的で不穏なアルペジオに始まり、つんざくような叫びと重々しいバッキングが広がりを感じさせる。アルペジオと泣き叫ぶようなボーカルが楽曲を牽引する感覚は北欧のそれともリンクするものがあるかもしれない。そして、アグレッシブなギターリフに切り替えて畳み掛ける後半の勢いにもついつい頷いてしまう。#2 “Unfading”は女性の語りに覆い被せるようにして叫び歌う絶叫とそれを美メロでサポートするギターが素晴らしい。タイトルトラックでもある#4はイントロのタッピングリフがモダンで現代のクロスオーバー的ハードコア要素をたっぷりと含んでおり、好感が持てる。そしてラストトラックの#5 “Neverending”でついにはクリーンボーカルで情感たっぷりに歌い上げることまでしてしまう、10年代以降バンドゆえの柔軟な「これかっこいい」要素の取り込みが見られ、わかりやすいなーと思いつつも展開の組み立て方やフレージングにセンスが光り満足度はかなり高い。
10年代以降の新世代へと移り変わり、ますますスクリーモやシューゲイザー等のジャンルとのクロスオーバー化の進む激情というジャンル、まだまだこれからも面白くなりそうですね。
どうでもいいけどジャケットがめっちゃBlind Girlsだな。