disc review現実に成り代われない幻想、死なないディストピア

shijun

Fantastic DragHave a nice day!

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東京のディスコパンクバンド、Have a Nice Day!のシングル。シングルではあるが3曲の世界観はつながっており、多幸感たっぷりのシンセサウンドと、隠そうともしないルーザー気質が見事に調和し、生々しいエモーションを煽ってくる一枚に仕上がっている。このシングルの楽曲は全てMVが製作されており、その全てにAV女優の紗倉まなが出演しているというのも話題性とかそういうの以上の効果が生まれている。彼女は綺麗ではあるが、間違いなくルーザーとしての要素も持ち合わせているし、MVで見せる表情もまた……

表題曲、大森靖子をフィーチャーしたシンセポップ、「Fantastic Drag(feat. 大森靖子)」。夜更けから夜明けにかけてのあの時間、踊り疲れてくだばりそうだけどそれでも快楽とそれ以降の何かを求めて踊り続ける、歌い続けてしまうあの時間を切り取ったような楽曲。憂鬱と擦れた希望が混じったような空気に大森靖子の歌声はこれ以上なく生える。Vo.浅見北斗のルーザー気質ダダ漏れのボーカルも最高で、大森靖子の歌声とは音の上ではコントラストをもたせつつ精神性は完全に一貫する。裏も表も裏。そこに乗っかる救いのようなシンセがまた別のコントラストを作っているのも見逃せない。やはり多幸感のあるシンセが耳を引く#2「マーベラス」。「Light my Fire, 火を灯せ 2017本目のロウソクに」なんて一見前向きなフレーズは彼らのルーザー気質とは相反しているようで、皮肉でもなんでもないルーザーの希望の歌なのである。だから「この世界の終わりを見にいこう」なんて言葉にも繋がる。一見キラキラしてるシンセが時に重苦しく聞こえてしまうサウンドの妙もgood。これまた多幸感たっぷりのシンセで綴られるインスト曲、#3Night Distortion」にどう言った感情を持つのか、どんな瞬間が湧き上がるのかは人それぞれだろう。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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