disc review落ち窪んだ瞳とざらついた心情の裂ける形
Are We All The Same Distance ApartCrooks UK
イギリス発のスクリーモニュージェネレーション、Crooks UKの2015年作。バンド名で被ったのか知らないけど、名前の後ろに出身国を並べるという異例のダサい改名を行なった彼らだが、もちろん音楽性はダサくない、Equal Visionのお墨付きの叙情的スクリーモだ。
メタリックに疾走するパイロットトラック、#1 “Above Me”はメロディックの様相を呈しながらも、多段的にリズムと拍取りが変動するアクロバティックな楽曲だ。同期もうまく取り込みながら広がりを見せつつも、独特の硬質さはNapoleonなんかにも通じるところがあって、UKのメタリックのトレンドなのかなと思ったりも。
#3 “Schone Seele”は視界が晴れて行くような、雲の切れ間を思わせる清涼なコード感。しかしそこはやはりスクリーモ、しっかりとボトムが厚いのもまた心地よさの後押しだろう。ここまでのハードさを一旦洗い流すかのような、#4 “May Be”はピアノとボーカルのみの弾き語り的トラック。この手の要素はやっぱりスクリーモのアルバムには必ず入っていて欲しい一曲で安心感。ピアノのリバーブ感が清潔でよく、フレージングも耽美的。続く#5 “A Few Peaceful Days”は歌い出しの”I question it all”のエモさが耳に焼きつく、リードトラック的な一曲。また、彼らお得意のリズム遊びが見られる面もあり、ドラムのフレージングが結構技巧的で、特に2:20からのハネの入った8ビートがかっこいい。
歌詞が結構女々しいのだけど、ボーカルの雰囲気がまた絶妙。ナードなオリヴァーサイクス(Bring Me The Horizonのボーカル)っぽい感じで彫りまくったタトゥーもなんとなく弱々しいし、もちろんそれがいい。
そして、#6 “Dear Reader”。これが結構アルバムにおけるスパイス的な曲で、イントロのスネアのブラストとデス系のメタルっぽい残虐なコードワークで、胎動して行くように巻き弦を力強く鳴らすハードなミドルテンポ。メタル風味程度かと思いきや結構がっつりと食い込んだ音が聞こえて来て、アルバムの中での印象深いナンバー。ここからは2曲温度感を抑えた楽曲が続くのだが、その分#9 “From the Sicks to Bitterness”のパンチ力は高い。のっけから疾走しまくる様には緊張感からの解放を感じるし、中盤のアルペジオには慈愛的な明るさが見え隠れしている。そしてスクリーモのアルバムの最終トラックといえば?そう、長尺のエモバーストと相場が決まっているというものです。その理論は彼らにも当てはまるのか?彼らにとってのエモとはなんなのでしょう。#10 “Harmony Falls”は爆撃するハードなドラミングも序盤のみで一旦なりを潜め、繰り返されるアルペジオに静かに独白が重なって行く。ここからもうひと盛り上がりするかと思いきや、フェードアウト、余韻を残してアルバムは幕引きとなる。この後ろ髪引かれる寂しさは、これはまたこれで非常にいじらしく聞こえるもので、ハードな音像ながらも、ナイーブさが隠しきれない彼ららしい屈折の形のように思えますね。このアルバム以降の活動は謎なんですが、せっかくだし新曲も聴きたいな。SAOSIN、Thursday等中心に持ち上がって来たスクリーモというジャンル、日々歩を進めていて面白いです。