disc review朗々たれ、日々に喜びあれ、音に歪みあれ

tomohiro

FoxingFoxing

release:

place:

みんな!!!人々!!PEOPLE!!!聴いた??Foxingの新譜聴いた???全人!!!Everything!!!!

Foxingといえば、TWIABP&IANLATD(The World Is A Beautiful Plaae & I Am No Longer Afraid To Die)と並び、近年のエモにおけるビューティフルエモと称される美麗派バンドですね。

かつてのEmpire! Empire! (I Was a Lonely Estate) をも思い起こさせるような、睫毛に垂れる水滴のような泣き虫で繊細なメロディに、地平線を押し上げていくようなスケール感を重ね着して、牧歌的でもあり凛としている、そういった音楽を志向していくのかとなんとなく自分は思っていたのですが。

そこに異変が起きたのが、前作『Draw Down To The Moon』。これはマジで稀代の名盤が来たぞとリリース当時大興奮していたその音像は、これまでの端麗さを思わせる手触りからギラっと一転、油絵のようなカロリーを感じさせる厚塗りのシンセとグルーヴを増したリズム、そして堰を切ったかのように叫び始めたボーカル、コナーの粒子の細かいシャウト、これが渾然一体となってまさに混沌の様相。僕の2021年をエネルギッシュに彩ってくれた音楽となったわけです。

んで、3年経ちました。僕はインスタでearfeederが上げてる9月の良かったアルバムポストを眺めていたわけですが、そこで目に入ったFoxing『Foxing』の文字。Nothingの『The Great Dismal』、Deafheavenの『New Bermuda』を脳裏に去来させる、期待感を煽るダークなジャケット。エキセントリックな前作でおそらくファンの賛否を大いに煽ったであろうそこからの新作として確信みのあるセルフタイトル。生唾を飲み込みながら聴き始めた僕の耳に入るウィスパー。皮膚が粟立つ感覚、これは間違えなく、大波のための………。そして!!!!!!!!!!!

とんでもないアルバムですこれ。

こんなに歪んでで良いわけないでしょ、良いんですよね。正解は歪ませることではないが、歪んでいることは正解、伝わってほしいなこれ、伝わるよね?

歪みって、歪むほどにその音像に含まれていたニュアンスはコンプレッションされて、どんどん筋密度が高くて小さい砲丸のような音になっていって、それは一見すると世界観の圧縮にも見えるわけなのだけど、それは結局音の話でしかない。どこでどの太鼓をぶっ叩くか、どこでぶちかますか、結局はナマモノである音楽はエモーショナルひとつで何回でも世界を拡張し直せる。そんなコンプレッションされた高密度の鮮血の肉塊を絵の具に、キャンバスに打ち付けて世界を再度描き直していくような鮮やかさと凄み、なんて生命力なのか。

前作にも増して完全に倫理的なラインを超えてるコナーの激唱、近年の音圧戦争は「音出さんでええ」に収束しつつあるが、それに逆終止符を打たんとするか、歪みすぎてデカすぎる音。人格が20あるみたいな音、音、音、音色!

耽美に人の心を撫でるような音楽だったFoxingは今作において、完全に人の心を奮い立たせ揺り動かす、雄々しいファンファーレへと変貌した、感じよ生命の息吹!地球よ紀行せよ!

俺を本当に笑顔にしてくれてありがとうFoxing。音楽よ力なれ、人々の力なれ。

ピッチフォークへ、7.8つけとる場合ちゃうぞ!!!!!100億点やろ!!!!

 

↓新譜で一番踊れる曲

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

このライターの記事を読む