disc reviewインドから立つ、モダン・テクニカル・Djentの最重点
Blinding White NoiseSkyharbor
インドのモダン・メタルの牽引者として十分にその実力を感じる、Keshav Dharのテクニカル・デス/Djentメタルプロジェクト、Skyharborの処女作。Djent的影響はもちろん各パートのフレージングに現れているが、リズム的な捉え方としては、ポリリズムはそれほど用いられておらず(Illusionサイドでは多いがChaosサイドにはそれほど印象がなく感じる)、Djentも通ったテクニカル・デスメタルといった印象だ。Sumerian界隈で例えるなら、弾きまくるも知的な面影のあるフレージングが、Periphery、The HAARP Machineあたりと並べられるだろうか。キャッチー、デスコアによれば、Veil Of MayaやAfter The Burial、ディープなカラーを出せばThe Facelessのような方面に近づいただろうが、あくまでも、この系統としては正統派な音像だと思う。
IllusionとChaosの2枚組構成となっており、Illusionでは、Tesseractのボーカル、Daniel Tompkinsをゲストとして迎え、アトモスフェリックポストロックのような壮大さを演出する。クリーントーンのボーカルの美しさを引き立てるようにギターリフもやや音量は小さめに、淡々と繋げられる。また、”Celestial”には、ゲストギタリストが参加しており、プログレッシブインストゥルメンタルAmogh Symphonyのギタリスト、Vishal J.Singhによるエスニックなクリーンギターや、日本ではもうお馴染みのMarty Friedmanによるスイートなギターソロが堪能できる。メロディやコーラスワークにどことなくにじみ出る中東感は、Keshavのセンスか、Danielの癖なのか不明なところはあるが、匂わせるほどの程よいオリエンタルはクールな印象を与える。Djentらしいイントロの音処理と上モノの煌びやかさを見せる”Order 66”はテンポとしてはダウンめだが、疾走感を感じるフレーズワークとダークに語尾を落とすメロディがリピート力を高める。また、”Catharsis”では、Danielのスクリームも聞くことができ、クリーンのみでない彼のボーカリストとしての実力の高さを実感できるだろう。
Amogh Symphonyは新譜(?)ではオリエンタルな方面に特化したよう。程よいオリエンタルさはOrphand LandやMyrathと比べると中東系メタルとしては面白いスタイルかもしれない。
こちらはChaosにゲストボーカルで参加するSunnieth RevankarのバンドBhayanak Maut。ニュースクールからの影響も十分な骨太のメタルコアだ。
また、個人的には3曲で構成される、Chaosサイドの楽曲を推していきたい。同郷のメタルコアバンド、Bhayanak Mautのボーカルを迎え繰り広げられるChaosは、テクニカルなメタルコアとしてのSkyharborの実践であり、半音階を駆使するフレージングも合わせて、ギタリストとしてのKeshavの実力が十二分に発揮されている。特に”Trayus”はイントロから強烈に脳内麻薬を分泌させてくる。”Aphasia”も一曲目のインパクトに負けじとのっけから譜割り解析難度の高い変拍子リフで聞き手に挑戦的だ。サビの爽快感とサビ裏のギターの独特の刻みも聴きどころ。また、”Insurrection”は中盤のギターフレーズの慌ただしさがもはや圧巻だ。ボーカルのデスボイスが、ややクリアではなく力技感があるのも、ハードコアっぽくて、バックトラックのクリアで理知的な面との対比も合わせて面白いところかと思う。
Monumentsなどと合わせて、ニュー・Djentとしてシーンを牽引するに十分な実力を持つSkyharbor。2014年、2015年と音源をリリースし、今後の動向もますます楽しみだ。
2014年リリース。
2015年リリース。Daniel Tompkinsをメンバーとして迎え入れ、引き続き活動中のようだ。