disc review2021ベストミュージックたち – トモヒロツジ選

tomohiro

はじめに

みなさん、年の瀬いかがお過ごしでしょうか。トモヒロツジです。今年はcllctv.としてはレビュー3本、インタビュー1本でなかなか生存確認って感じの活動でしたが、何はともあれ年末を迎えられたことは嬉しく思います。個人的にも今年は体調を崩していた期間が長く、音楽と向き合えていた時間も少ないように思うのですが、そんな中でも今年リリースのアルバムの中から9枚、ベストアルバムとして選びました。ちなみに9枚にした理由はサムネイルで9枚並べると気持ちいいからです。cllctv.としては9枚の選出ですが、個人的な2021ベストトラックスとして、Apple Musicのプレイリストも作ったので、削ぎ落とされていない僕の2021年全量を確認したい方はそちらもチェックしていただけたら面白いかなと思います。本記事でのベストアルバムは順不同、アルファベット順で書いていきたいと思うのでよろしくお願いします。

ULTRAPOP / The Armed

今年一番アドレナリンが出たアルバムは間違いなくこれですね。メンバーのたたずまいも最高すぎるALL FUTURESのライブ映像をピックアップしました。去年のCode Orangeと近い、2020年代って感じのデジタルハードコアとも取れるんですが、とにかくThe Armedの気持ちいいところはめちゃくちゃ音楽が肉体的なところですね。歌、シャウト、シンセのメロディ、とにかく全てをぶっ潰すノイズギターがフィットネスジムで己の肉体美を競い合っているような汗臭い共演が最高ですね。今ライブが見たいバンドナンバーワン。きてくれフジロックに(ないか)。

 

Infinite Granite / deafheaven

deafheavenはそもそも僕自身大ファンで、ポストブラックメタルの新境地を切り開いた彼らの音楽には常に尊敬の念を持って接しているのですが、今作はさらにもう一回ジャンルの新境地を切り開いた感じがして本当にしびれましたね。ピックアップした曲In Blurは瑞々しさと沈み込んでいく悲しみの具現化のような深い青の音像が印象的。伝家の宝刀だった最強のシャウトを努めて抑えながらも要所要所で激情的にぶちまける今作は美的センス◎で最高でした。ずっとついていくか〜という気持ちになりましたね。

 

Draw Down the Moon / Foxing

FoxingはThe World  Is A Beatiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieと並んでエモの新世代バンドとして注目されていた若手最右翼株なバンドだったわけですが、今作は思いっきり新しい方向に舵を切ってきたのが最高でしたね。STRFKRとか、Toro Y Moiみたいなエレクトロポップ要素を強めつつも、ベースには骨太のエモソウルが宿っている結果、なんかイナたいめっちゃ踊れるインディーロックが生まれたわけです。ハイトーンがよく伸びる歌メロが秀逸で、シンガロングの気持ちよさと、体が自然と踊りだすようなグルーヴがエモと出会った名盤。ピックしたDraw Down the Moonはベースラインがとても気持ちよくて一時期そのコピーを一生懸命していました。

 

煌めき / FUJI

今年の宅録界隈を完全にざわつかせたニューエイジホープフルカマー、FUJI。音楽全てから漂ってくる気だるい諦念はそれを描き出せる「時」が人生の中で限られているもので、それを生々しく、120%の潤いで描き出しているこの作品は完全に問題作ですね。こんなアルバムが出せたら俺の音楽人生ゴールだったんじゃね?とちょっと思いましたね。それくらい完全に美しいオルタナティブギターロックで完膚なきまでに叩き潰されました。宅録をちょっとでもやってみた人は全員刺さるんじゃないかな。本当にかっこいいんです。

 

Mood Variant / Hiatus Kaiyote

Hiatus Kaiyoteのブーム自体は僕が大学4年くらいの頃に所属してたバンドサークルに来てて、そもそもその頃ニューエイジプログレジャズみたいなのがめちゃくちゃ流行ってたんですが、僕がしっかりハマったのは今作でした。このバンドはとにかく演奏がうますぎる。キモすぎてこんなのでグルーヴさせられねぇよみたいなテクニックの凝集音楽を平然と演奏してのける楽器隊がそもそも偏差値70くらいあって、そこにボーカル、ネイパームの妖艶な歌が乗ることによって偏差値90くらいまでぶっ飛んでしまった宇宙をグルーヴさせるバンド。それがHiatus Kaiyoteです。毛並みのいい猛獣みたいなギラつきが時々怖ささえ感じさせてしまうアルバムですね。

 

泳ぐ真似 / Kabanagu

今年は僕の中に空前のハイパーポップブームが訪れた年で、4s4kiとか、100 gecsとかFax gangとか(これはハイパーポップなんかな)underscoresとかめちゃめちゃに聞いてた年なんですが、そんなシーンの盛り上がりに対する2021年日本からの回答が本アルバムです。ハイパーポップネイティブな破壊的サウンドを取り入れつつも、清廉なクランチギターと多重録音のボーカルワークが非常に清潔にセンス良くまとまっていて、とにかく聴きやすく奥深い。そもそもアルバム通しで20分弱ないボリュームが絶妙で、何周でも疲れなく聞けてしまう、質のよい手工業品のような馴染みの良さがあります。ハイパーポップ史に残すべき名作。将来ハイパーポップディスクガイドに間違いなく載るでしょうね。

 

Hey What / Low

今年の新譜で一番歪んでたやばいインディーロック。そもそもLow自体がアメリカーナなドライさとエモのウェットさでスローコアの重鎮として君臨してたはずなのに、気づいたら音を歪ませることに至上の喜びを見出したマッドサイエンティストみたいな音楽になってた。とにかく歪んでるんですが、男女二声の歌メロが讃美歌みたいに朗々と響いていてその組み合わせがポストアポカリプス的な美しさを感じさせるわけですね。今年見たA24配給の映画、ライトハウスと世界観がマッチしすぎててテーマソングだなと勝手に思ってます。

 

ENTERTAINMENT, DEATH / SPIRIT IF THE BEEHIVE

なんか手を替え品を替え歪んでいる音の音楽の紹介ばかりしてる気がする、今年のベストアルバム。SPIRIT OF THE BEEHIVEはとにかくニヒルな世界観が魅力的だと思います。ジャケットがめちゃくちゃいいんですよね。今年聞いた中で一番ジャケットが好きかもしれない。まさしくENTERTAINMENT, DEATH、歓楽街のゴミ箱に突っ込まれた死体みたいな、きらびやかさとその裏に潜むグロテスクさを描くことに終始していてとにかく性格がねじくれてる人間が作ったんだろうなと思わされるアルバムですね。でもそういうのが好きなんだな、と再認識させられたわけで、今年のかなりのヘビーリピート作です。

 

fish monger / underscores

今年最も聞いた音楽賞、今年の一番いいMV賞、これからもずっと聞いていくぜ賞の三冠達成です。おめでとうございます。この曲は本当に最高ですね。ハイパーポップとポップパンクをうまく組み合わせていて、静と動のダイナミクスの作り方もとてもうまい。今年の後半に出た2021年2枚目のアルバムもかなり良かったんですが、やっぱりSpoiled little bratが大好きなのでこっちをベストにします。ハイパーポップ、出会わせてくれてありがとう。おかげで毎日楽しいです。

 

おわりに

今年は歪んだ音の音楽をいっぱい聞いたなぁ、という感じです。他にも次点で平沢進の新譜、black midiの2nd、PinkPantheressの1stや4s4kiの新譜などなど上げたい音楽はあったんですが、そこらへんは選外のプレイリストとして以下にまとめました。うーん、今年はあんまり意外性のないベストアルバムだったかな?また来年もいい音楽を聴くぞ!

 

選外 – トモヒロツジ2021 best tracks

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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