disc review比類なきテクニックとフィーリングで魅せるヘヴィ・リラクゼーション
Animals As LeadersAnimals As Leaders
今やインストプログレッシヴメタル界隈においてその地位を確固たるものにした、圧倒的テクニカルがツイン8弦ギターとドラムに唸るAnimal As Leaders。その出発点となった1stフルレングス。
メインコンポーザーであるTosin Abasiが、自身の所属していたバンド、Refluxの解散ののちにソロ活動として始めたのがこのバンドだ。Reflux自体は、このバンドのようなテクニックに偏重したバンドではなく、あくまでもハードコア要素を残したメタルコアバンドであったが、すでにこのバンドに所属していた頃から彼はその圧倒的なテクニックを持て余していたように感じられる。バンドの解散後、Refluxの所属していたProsthetic Recordsから、ソロアルバムの制作を打診されたAbasiは、一度断るが、自身の音楽の素養を高めていく中で、考えを改め、ソロアルバムを作る決意をする。しかし、彼はアルバムが独りよがりになることを嫌い、一人で作り上げることを望まなかった。
そんな経緯の中生まれた”Animals As Leaders”は、ギター、およびベースを全てTosin Abasiが演奏し、ドラムとプログラミングは全て、PeripheryのMisha Mansoorが行っている。こうして、彼の望み通り、”共同制作”として生まれたこのアルバムは、全ての曲にAnimals As Leadersとクレジットされ、このバンドの原点となった。
と、ここまではおおよそ、このアルバムのウィキペディアの概訳であるが、このバンドの成り立ち、並びに彼の精神性の一端を理解する助けになったかと思う。Atlanta Institute of Musicでジャズの基礎やクラシックギターを学んだAbasiは、その全てのテクニックを余すことなく用い、この怪作を完成させた。彼のギタープレイから感じられるプログレメタル、ジャズ、フュージョンからのインフルエンスと、Mishaのプログラミングによる、Djent的空気感が合わさり、Animals As Leadersとしか呼べない一つの音楽性を作り上げた。
タッピングやスウィープはもちろんのこと、スラップまで軽々とこなすAbasiのテクニックにはただただ恐れ入る。しかも、テクニックだけでしかない作品ではなく、ちゃんと音楽として素晴らしい完成度を誇っているのがおそろしいところだ。アルバムを代表するようなヘヴィでグルーヴィな#1 “Tempting Time”、#3 “Thoroughly at Home”、#8 “CAFO”、クリアなクリーントーンを多用することで透明感とリラクゼーションすら感じさせる#4 “On Impulse”、#7 “The Price of Everything and the Values of Nothing”、#11 “Modern Meat”、Mishaのプログラミングが冴え渡る#2 “Soraya”、#6 “Behaving Badly”など、聴きどころは多いが特にレコメンドするならば、初めて聞いた時テクニカルすぎて全く理解できなかった、”CAFO”、クリーンパートから終盤になだれ込んでからの早弾きまでの流れが非常にエモーショナルな”On Impulse”を是非聞いてみてほしい。
この作品以降、すでにフルアルバムを3枚(うち一枚は1stのEncore Edition)リリースし、その音楽性もより深化し、振れ幅も広がってきたAnimals As Leaders。満を持しての再来日を期待したい。
黒人かつ長身のAbasiはビジュアル面でも圧倒的だ。