disc review切り出し、崩れ落つ零下の相剋

tomohiro

Сети Olše

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連日暑い。こんな暑い日には何をするのが一番か。そう、ハードコアを聴くのが一番である。

本日紹介するのは、ロシアはサンクトペテルブルク発の北欧激情直下ポストハードコアOlše

北欧激情はそもそも僕が大好きなジャンルなので、このレビューサイトでも何バンドか名前を出してレビューしてきたし、今更長々説明する必要もないが、Suis La Lune、あるいはVia Fondoをはじめとした、寒々しく美しいクリーントーンのアルペジオを主体に組み立てるポストハードコアである。USや欧州のそれと違い、どこまでも悲痛で痛々しい叫びと凜とした佇まいは、国内の激情、あるいは残響系と呼ばれるバンドの多くに影響を与えたのではないだろうか。

今回は、北欧ではないものの、同じく冷たく厳しい土地であるロシアから届いた音楽だ。リリースは英国のDIYハードコアの良心、Adorno Recordsから。このレーベルは本当に異常なほどの鼻の効きで抜群にエモくて音が悪くて短くてうるさいエモヴァイオレンスを収集して、これまた抜群の安値でフィジカルリリースしている献身的なレーベルなのだが、そこから以前購入したうちの一枚。

 

#1 “Нить”が抜群にいい。ボーカルの叫びから幕を開け、大きく動きのあるリズムでアルペジオを絡めた視界の広がりは本場北欧の面々も思わず舌を巻くほどの美しさ。アルペジオの美しさを引き立てるようにコードを鳴らすことに徹する2本目のギターが屋台骨となることで、北欧激情に有りがちであった、音がか細いゆえの不安定さを払拭、より力強くエモーショナルに訴えかけてくる。#2 “Враг”の直線的な音の伸びや、力強いバスドラの踏み方はむしろ、スクリーモの文脈に近く、この辺りは新しいバンドであることを感じさせるハイブリッドスタイル。#4 “Сети “はギターのアルペジオ単体で幕を開け、加速するようにして歪んだギターが縦割りに空間を裁断する。その裂け目をこじ開けるようにして絞り出す叫びも、その裏で鳴る甘やかなギターも、その全てが寒々しく、悲痛に完成されていて、完成度に思わず唸る。

3LAが行なったOptimus Primeメンバーのインタビューにもあったが、ロシアは激情とエモがなかなかに盛り上がっている土地のようで、こういういいバンドが掘ればポロポロと出てくる。今後もシーンの動向に注目していきたいところだ。

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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