disc review2022ベストミュージックたち – トモヒロツジ選

cllctv

はじめに

どうもみなさん。もう年明けちゃいましたが、寝てないのでギリ2022年のテンションでこの記事を書いています。2022年のcllctv.はついに更新なし、ということでいやはや、という感じですが、まぁ今更いうまでもないですね。

活動としては一つ大きなものがあって、2年前にリリースしたコンピレーション、Internal Meeting Compilationのリリースイベントとして、Internal Meeting Festivalを開催できました。2日間、DAYTRIPとK.D ハポンを借りての大規模イベントで、ようやくあのコンピレーションに関わってくれた色々な人と対面で話すことができて楽しかったです。僕のバンドも4年?とかそれくらいぶりにライブができてよかったです。ギリバンドマンの端っこにぶら下がれた気持ちですね。来場いただいた皆さん、ありがとうございました!

さて、今年、2022年はコロナからの復帰が本格的に果たされてきたという意味で、非常に大きな動きにあった歳だったと思います。本当に嬉しかったのは、やはりフジロックに行けたことでしょうか。どうしてもコロナ以前と比べると規模の縮小こそあったものの、来日したバンドも、久しぶりの国内バンドもどれも本当にキラキラしていて、あー、ようやくここまで戻ってこれたんだなと感じられて嬉しかったです。

フジロックあたりから色々なバンドも来日ツアーも一気に戻ってきて、僕自身もここ数年不足していた生の体験を求めて色々なライブを見に行きました。Years & Years、Jamie XX、Charli XCXを見られたTONAL TOKYOに始まり、SQUAREPUSHER、Hadson Mohawke、IGLOOGHOST、BABii、black midi、Louis Coleと下半期怒涛の勢いでライブを見てエナジーをモリモリもらいました。

さて、そんなわけで、今年聴いた音楽のベストを発表していきたいと思います。今年も去年に続いて、サムネにしやすいという理由で9枚選んでます。よろしくお願いします。

Livestream Death Compilation / Birds Fear Death

1枚目はBirds Fear Death。去年はハイパーポップが自分の中で大ブームになった年で、今年もその流れは引き継いでいたんですが、ハイパーポップのいいところって、サブジャンル的に色々な音楽に引用されることが多いというか、色々なジャンルと融合して新しい音楽を生み出していけるところかなと思うんですよね。これもまさにそんな一枚で、いわゆる激情ハードコアなんですが、音割れの感じとか、キャッチーなメロディックパンク系の進行とか、きっちり2022年だなぁって感じがします。僕は音割れが大好きなのでこの曲でぶち上がったのはいうまでもなく。曲名とかアルバム名も近年のダークウェブっぽい気持ち悪さがあっていいですよね。

 

春火燎原 / 春ねむり

 

ハードコア中心の品揃えで今や国内最大手ディストロである3LAの水谷さんがずっと春ねむりを推してて、今まで聞いたことがなかったので、どういうつながりだろうと思っていたんですが。今年の新譜にあまねくん(ウ山あまね)が関わっているというのを見て、それきっかけで聞いてみたんですが、なるほど完全に点と点が繋がった気持ちでした。春ねむり本人も標榜するライオットガールという言葉がありますが、春ねむりの音楽には確かなパンクスピリットがあって、なおかつそこにある種の抜けるような清涼感も同居しており、そのバランス感が爽快ですね。『あなたを離さないで』の焦燥感と疾走感は2022年の一つの象徴のような音楽でした。

 

bulldose / the bercedes menz

今年リリースの音楽で最初に脳にぶっ刺さりしたのはoverusedの『手紙』でした。最高の音楽だー!と思ってたらそのまま解散しちゃって、気持ちのやり場がないよと思っていたところだったのですが、メンバーの喉笛氏が新しく始めたバンドthe bercedes menzがまためちゃくちゃかっこよくて、音楽を続けてくれるのってありがたいなと思った次第です。とにかく情報量が多いのがいいタイプの音楽で、DIYスピリッドが濃密に香ってくる感じが嬉しくなりますね。歪みすぎギター、動き過ぎベース、多過ぎコードチェンジ。やり過ぎなほど良いと思います。今年一番聞いたアルバムでした。結局こういうのが好きなのはずっと一緒。OTAKUリップオフなジャケもいいですね。

 

Walk Through The Stars / ピーナッツくん

 

ピーナッツくんといえば、今や個人勢VTuberの中で揺らぐことないトップクラスの存在なわけですが、前々からミュージシャンとしてもガチなことは知られていたわけで。去年のアルバム”Tele倶楽部”もめちゃよかったんですが、去年のアルバムはVTuber周りの友達カルチャーを中心に組み立てたアルバムで、ある種、内輪な感じもあったかなと思ってたんですが。今年のアルバムはnerdwitchkomugichanはじめ複数名のミュージシャンと組んだことで一気にトラックに現行のクラブシーンの香りが漂ってきて、全体的にゴリっとした仕上がりになって気持ちよかったです。あと基本的に今作はピーナッツくん一人の歌唱になったことで、アルバム自体に内省的なテーマも付与されて、そのメジャー感とインディーズ感の中間地点にある感じもよかったです。ライブも見たんですが最高でしたねー。

 

わーーーぷ / われらがプワプワプーワプワ

 

日本でリリースされたすべての音楽を聞いた上でその年間TOP 100を発表しているインターネットのオバケ、青木龍一郎氏の2021年TOP 100にランクインしていたことから知った、われらがプワプワプーワプワ。いわゆる地下アイドルなんですが、正直言って楽曲のクオリティが地下アイドルというくくりで語るには頭3つくらい抜けてると思います。たまにキラーチューンを出すんじゃなくて、それなりに楽曲が出てる中でそれを全体シャッフルしてかけても特にスキップとかせずにどの曲も聴けてしまえて、非常に平均値が高いです。アイドル楽曲あるあるとして、なんか足し算過ぎてカロリーが高いみたいなのがあるかと思うんですが、とにかく楽曲がスリムでセンスを感じます。メンバーがかなり流動的らしく、ある意味メンバーのキャラクター依存ではなく、あくまでも楽曲を中心としたユニットとしてアイドルをやっているからできるスタイルなのかもですね。今年出た”わーーーぷ”は中でも特にアルバムとしての全体的なクオリティが高くて今年かなりリピートした一枚です。かなりベタな感じではあるんですが『デスペラード・マスカレード』好きです。あと『スウィートエンドロール』もいいです。歌詞もすごくアイドルしていてグッド。

 

Ants From Up There / Black Country, New Road

フジロックにFONTAINES D.C.の代打で来たBlack Country, New Road。直近でボーカルが抜けたこともあって、ほぼ全曲新曲でのライブというかなり攻めたセットリストだったんですが、終始垢抜けないけどリラックスしてるっていう不思議なピースフルさを漂わせていて、とにかくライブ見てよかったなぁという気持ちになりました。ポストロック+カントリーで牧歌的な雰囲気を漂わせながらも、知的さとじめっとした内向的な感じも含ませているのがザUKって感じでいいです。Squid、black midi、BC, NRと最近のUKの若手は勢いがあってすごいですね。そういえばMURA MASAもイギリスか。ちなみにアーティスト写真が良過ぎです。

BCNR photo

 

ムームート / ウ山あまね

 

日本のハイパーポップ最先端の一角。前作”Komonzo”で耳の早いリスナー全員の心を掴んでいたところで、2年間積み重ねてきた上でのこの一撃がもう必殺って感じですよね。音の一つ一つが鈍器のような重さと硬さがあって、とにかく音で殴ってくる感じがすごいです。音で人を殴り続けることに関して一貫したこだわりを感じます。ピックした『タペタ』はそんな中でもかなりメロディアスな曲でこれをしれっと挟んでくる感じ、交互浴で脳をバグらせようという確信的な行いな感じがする。ピーナッツくんと対バンをしていたのを見に行ったのですが、WWW Xパンパンに人入ってて、多分ほとんどがピーナッツくん待ちだったと思うんですけど、そんな人たちに一切遠慮なくいつもの5倍増しくらいの爆音を出してたところがグッときました。僕の前にいた人ずっと耳塞いでた。

 

アイランド / 明日の叙景

 

今年一番ジャケットがよかったアルバム賞。明日の叙景は初期のブラックゲイズ色がかなり強かった頃からずっと好きではあったんですが、今作はJPOPやアニメのニュアンスを多分に取り込んで良い意味でガラパゴス化したブラックメタルを完成させていて完璧だな、、という気持ちになりました。ピックしたキメラは基本的な方向性のブラックメタルからはスッと立ち位置を変えて、言ってしまえばめちゃくちゃCOALTER OF  THE DEEPERSしてたのがグッときました。年末のワンマン見に行ったんですが、ほぼMCなしで60分走りきったラストにパーンッと『キメラ』が始まって、一気に会場に大団円の空気と盛り上がりが生まれていたところにこの曲のマスターピースさを見ました。絶対にレコードで欲しいと思ってたジャケットだったのでレコードも出してくれて嬉しかったです。

 

HOWL / ROTH BART BARON

今年の森道で初めてライブ見たんですが、過去の音源から感じるインディーフォークさ以上にグイグイ来る熱量のあるバンドだなと思ってました。そういう認識の切り替えみたいなのがあった上で今年の新譜を聴いたわけですが、クールながらも熱量が根底にずっとある感じで、それをスラリと聴かせる感じが技巧的ですごいなーと思いました。僕は結局わかりやすいのが好きなので『ONI』をチョイスしました。イントロなしのハイトーンな歌い出しとバッキングで鳴るクランチのシンプルなギター。アルバムの中ではちょっと空気が変わる曲なんですが、これ単体で聴いてもかっこいい。でもアルバム全体を通して世界観がしっかりできていてかなり没入できるので、ぜひアルバム通しで聴いてみてください。

 

おわりに

今年は9枚中7枚邦楽でした。ライブ自体はかなり外タレも見たし、特に今年はIDMとかで爆踊りしてた記憶が強いのでなんか意外だなという感じですが、今年はあんまり集中して音楽を聴いてなかったので、結局ローカロリーで聞けるのは馴染んだ音楽だってことなんですかね。

今年リリースに限らない中でもたくさん聴いた音楽はあったのでそれらもさっくり上げておきます。

 

ほんとか嘘かわからないバンドの背景の話がやたら濃いけどそれはそれとして普通にいい

 

Kabanaguくんが新譜のリリースに当たってリファレンスとしてあげてて刺さった。めちゃポップでキャッチー。

 

今年の一番の事件は間違いなくROROのサブスク解禁でしょう。過去20年の国内音楽シーンでTOP10に入るアルバムだと思います。

 

選外 – トモヒロツジ2022 best tracks

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