disc review90’sエモ通過型ポストハードコア新世代の幕開け
LoomFrameworks
10年代のネクストスタンダード型ポストハードコアの一端を担うことを確実に感じさせる充足感に満ちたイントロから幕を開ける#2 “Loom”に始まり、慌ただしい各楽器の共演からスローパートへの変遷が鮮やかな#3 “Mutual Collosion”、繰り返されるハードコアライクなリフに美麗な白玉フレーズが重なり、中盤以降のアルペジオリフと転調で、これほどまでかというほどに激情を攻め立てる#5 “Splinters”、暗雲立ち込める不穏なリフと、ミドルテンポな飛び道具フレーズがシューゲライクな#9 “Familiar Haze”、そして最後を長い長いインストフレーズからの暴発で飾る#11 “Agreeable Thoughts”に至るまで、その随所に散りばめられるシューゲイザー、エモへの傾倒がとてもハイセンスで好印象だ。
フロリダ出身の4人組であり、これだけの激情具合でありながら整合性の取れた美麗な展開には感動した。過去の作品では、ホーン隊を曲に入れたり、より曲調自体も90’sエモ直系の趣があったが、今作ではそれらの影響下ながら、彼らでしかない正の方向への逸脱に成功している。いずれの曲も3分弱とは思えない熱量と情報量を内包しており、アルバムを通しての満足感の高さは必ず約束できる。前回紹介したCaravelsと並び、リアルスクリーモの血を引く新生代型スクリーモの一つとして語るにふさわしい完成度でありながら、デプレッシブな路線を突き進んだCaravelsと比べると、音像がポジティブでドリーミーであり、現代のメインストリートに確実に寄せてきているところがなかなかに確信的で良い。
ハイブリッドという言葉は、ともすれば器用貧乏的なニュアンスで揶揄として用いられることもあるように思うが、このバンドに関しては、まさにAクラス同士の融合であり、アンサンブルの美しさも維持しつつ、リズム隊のグルーヴ感が自然に身体を動かす一体感は、まさにライブバンドたる気配を内包している。激情、スクリームなど、重い要素を多く持つ音楽性ながら、ともすれば清涼感さえ感じるようなソングライティングは見事の一言。安心、信頼のTopshelfからのリリース。
余談だが、LP版の切り抜きジャケットが見事なので、可能であれば是非LP版を手に取ってみてほしい。
Loom
Splinters
Agreeable Thoughts