disc review純粋すぎる衝動の残す爪痕
残響も失せた過去と諦めに彩られた未来にGauge Means Nothing
2000年代前半に、日本に興隆し、現れては消えた数多の激情系ハードコアバンド。それらの中でもごく初期に活動し、その独自のスタイルで現在も後進のバンド達に大きな影響を与えるGauge Means Nothing(ゲージミーンズナッシング)の代表作。CD 版と12’版とがあり、収録曲に違いがある。今回はCD版についてのレビューとなる。特筆すべきは、キーボードと女性ボーカルをメンバーに抱えることによる、サウンドの人懐っこさだ。どう考えても安物万歳なキーボードサウンドと、下手クソな舌足らずの子供のような女性ボーカルとが、悲痛なシャウトとドス重い演奏の中に入り乱れる様子は、まさに混沌としており、カオティックハードコアと形容するにふさわしいものである。基軸となるサウンドは、Envyやheaven in her armsのようなポストロックに近づいたアプローチと比べると、ドラムのブラストやギターのトレモロリフなど、よりメタル的な方面に傾倒しており、これもある意味愛すべきポンコツさに拍車をかけている。
そして、これらのともすればマイナスにもなりかねない各要素を全て払拭するに足るのが、ギター、キーボード、歌メロに染み出しているメロディーの愛しさだろう。胸が苦しくなるような切なく青いメロディーを、これほどかというほどに楽曲に盛り込んだ4曲は、一度琴線に触れたら僕らの心を掴み続け離すことはない。#1に見られるような、メランコリックなクリーンのアルペジオにハミングが重なるような場面、#4のアルペジオから突然疾走を始めるメロディアスなリフフレーズなど、その気持ち良さはここに語るには余りある。また、12’版に収録されている叫びまくりの”右手”も語られるべき名曲だ。
前述の2バンドを聞いて激情系というジャンルを知った人も多いだろう。もしまだGauge Means Nothingを未体験ならば、体験すべきだ。
黒く染まる