disc review長い睫毛を伝う耽美さと繊細さ

tomohiro

Out Of The Fierce ParadeThe Velvet Teen

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ウィンドチャイムやストリングスの荘厳で煌びやかな前奏により幕を開け、美しいファルセットボイスが儚い輪郭線を象る#1に始まり、静謐とした空気を突如塗りかえるかのごとく始まる、アップテンポなキラーチューンである#2、そのままJellyfishだと言ってしまえるようなパワーポップなメランコリックナンバーの#4など、アルバム一枚でバンドとしての幅の広さを見せつけ、その完成度にため息が出る。

アメリカ、カリフォルニアに生まれたThe Velvet Teenの1stアルバムは、2ndの”Elysium”に見られるような大成した鮮やかさとは違った、初期衝動に溢れた輝きに満ちている。ボーカルを務めるJudahの形作る繊細なメロディラインを彩る、最小限のアンサンブルによる演奏と美しいコーラスワークは、メロディの伸びやかさを最大限に生かすように構築されており、まさに、細やかな細工の施された象牙細工のようである。

同年にリリースされたThe Promise ringの”wood/water”ようなソフトエモとも十分にリンクするような、あたたかく寄り添うような温度感もしっかり持ち合わせているところも好感の持てるところである。近年日本でも流行の只中である、センシティブな内向型ギターロックの源流の一端を感じ取るに相応しい作品だと言えるだろう。

Radiapathy

Caspian Can Wait

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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