disc reviewめくるめく轟音に彩られた一夜の夢
nightportergeek sleep sheep
MO’SOME TONEBENDERの百々和宏(Gt.Vo)、凛として時雨の345(Ba.Vo)、そしてL’Arc〜en〜Ciel、acid androidのyukihiro(Dr)という豪華なメンバーで結成されたgeek sleep sheepの1stフルアルバム。シューゲイザー、ニューウェイヴ、オルタナティブロックをベースにしつつ、インディー・ポップ的な質感の楽曲もあったりと、メンバー3人のパブリック・イメージから考えるとやや意外かもしれない。(中心人物である百々は自身のバンドMO’SOME TONEBENDERでもそういった楽曲を発表しているため、それを知る物からすれば想像の範疇かも知れないが。)シューゲイザーの影響を感じる轟音ギターが特徴的で、時に心地よいキラキラした轟音、時に凶悪でノイジーな轟音と、あらゆる種類の轟音を炸裂させつつ、あくまでポップに彩っている。男女ツインボーカル編成も特徴の一つで、百々の良くも悪くも癖の強い歌声に、345の透明感のある癖のない歌声の取り合わせがまた良い。
#1からシューゲイザーの影響を感じるキラキラとしたポップナンバーを見せ、続く先行シングルにもなった#2もローファイな轟音が穏やかな心地よいシューゲイザー・ポップ。百々と345のツインボーカルに泣けるメロディーラインも相まって、スリーアウトチェンジ期のスーパーカーを彷彿とさせる。#3は切れのいいギターと歪んだベース、記号的なボーカルの絡みが面白いオルタナな曲で、最後は轟音が炸裂する。続く#4はグランジ的な暗いリフを中心とした激し目の楽曲で、百々のシャウト気味なボーカルも飛び出す。#6はサビで日本人的な切ないメロディを披露しつつも、間奏では熱量を抑えたクールな色気のあるギターソロを見せる。#7は唯一の345作曲の曲で、ベースのアルペジオが心地よい。サビやアウトロではギターも炸裂する。#8は怪しげなコードと癖になるドラムが印象的で、百々のボーカルも怪しげな雰囲気をまき散らすがサビは明るい。#9ではJesus And Mary Chainかのようなノイジーなギターが暴れまわり、#10はGOING UNDER GROUNDの様な爽やかなメロディをシューゲイザー風味で味付けした名曲。長めのギターソロは余韻を残し色気を見せるし、一瞬現れる345のボーカルがハッとさせてくる。コーラスワークも美しい。#12はAメロで気だるさを感じさせつつ、サビでは轟音とともに締めにふさわしい壮大さのあるメロディを奏でる。そして最後はノイズ。心地よい轟音で余韻を残してくれる。
どうしてもサイドプロジェクト的色が濃く見えてしまい、彼らの組んでいるメインのバンドに興味が無い人は敬遠してしまうバンドなのではないかと思う。が、モーサム、時雨、ラルク、どのバンドにもない音楽性を志向して活動しているので、先入観を取っ払って一度手に取ってみてはいかがだろうか。至福の轟音が待っている。