disc review耳窩に残る金属質の傷跡には、確かな温度感があった。

tomohiro

白い空気とカーディガンと頭痛caroline rocks

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鋭利でキンキンとした鳴りのギターと中性的なミッド~ハイトーンボーカル。支える強靭なリズム隊とメロディアスなギターが白色の鳴りはそのままに、そこに幅のある色調を加えていく。

2005年結成。2012年にその活動の幕を閉じた、下北系ギターロックの鋭利な一端を担っていた4ピースギターロックバンド、caroline rocksの最初の流通音源。

スロウでメロウなまどろみの中から、突然の覚醒とともに、重厚な音圧を行使する、表題曲、白い空気とカーディガンと頭痛NUMBER GIRLよろしくエッジーでスライシーなイントロが、ギラついた00年代を思い返させるような、キラーチューン#2 “白昼夢はどこかジューシーさも感じるVo/Gt. 渡辺のハイトーンに物怖じしないメロディラインに、ある種の乱暴さがあって、胸がすく思いになる。#3 “錯覚ドラマチックは骨太のベースリフがゴリゴリと曲中に一本道を通し、そこに各パートがジャムるような感覚でリフを色付けしていく。peelingwardsCRYPT CITYに代表されるようなエッジーなオルタナ、ハードコアバンドの文脈で語ることのできる曲だろう。#4 “square”はインストトラックだ。例えばthe cabsなんかもそうだったが、1stミニアルバム(という、世間に対してのファーストインプレッション)から、ショートチューンや、インストトラックなど、歌モノとして尖った要素を入れていくのは、諸刃の剣の印象もあるが、マイクを取らない渡辺の弾くギターの味を噛み締めることができる、このトラックは、実は結構贅沢な一曲なのではないかと思う。#5 “0℃”People In The Box完璧な庭っぽいイントロが、かつての残響リスナーとしてはまず耳に止まるが、そこからなだれ込む音響的ギターと、しっかり地に足のついた感のあるメロディワークが2番煎じと言わせない説得力がある。そんな話の直後で何だが、#6 “夢の中の君は”picnic”~”paraphilia”期のTHE NOVEMBERS、あるいはblgtzからの影響たるやいかほどかと言わんばかりのドリーミィなトラックだ。しかし、我々は時として、「あのバンドっぽいけど、あのバンドじゃないバンド」という枠のバンドを探しているのも事実で、そう言ったリスナーに対するアプローチとしては大成功なのではないだろうか。そこで引き込んでしまえば、他の楽曲で、彼らcaroline rocksは十分に表現できるのだ。

アルバム全体を通して、「夢の世界」がキーワードとなる浮遊感と白い幸福感のある靄に包まれた楽曲が多いのがこのアルバムの特徴だ。次作の”parallel.”ではもっと無機的で構造的な冷たさを持つ楽曲が並ぶ。ここでは大きく場所をとって紹介できなかったが、2ndのリードトラック、パラレルのリフの破壊力と言ったらないので、ぜひ一度聞いてみてほしい。

 

現在は解散後各々の道を歩み、自己の実現に向かっている彼ら。(Vo/Gt. 渡辺は、陶芸家への道を、Gt. 砂川はCzecho No Republicでギターを、Ba. 和田は当サイトでもレビューしているMEAT EATERSのベースを、Dr. 平沼はWhite White Sistersのドラムとして現在は活動している。)各所での、彼ら個人のこれからの活躍が楽しみだ。caroline rocksは終わったバンドだが、彼らは全員が、自分の見据えるものを続けることを選ぶことができた。それはこのバンドに確かな手応えを彼らが得られていたことの証拠なのではないかと、僕は思う。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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