disc review欧州激情、カオティックも飲み込む、90’エモ通過型新世代の意欲作

tomohiro

SmotherFrameworks

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1stフルアルバムも当サイトにてレビューした、新世代ポストハードコアの騎手、Frameworksの2ndアルバム。1stアルバムにおいては、さすがはTopshelfに目をかけられただけある、ヘナくてメロいエモギターと絡むギャンギャンのスクリームが鮮烈で、さぞかし興奮したものだった。その後1枚の7inchをTopshelfから続いてリリースすると同時に、彼らから発表されたのが、Deathwishへの移籍だ。

DeathwishといえばConvergeのJacobの設立した、言わずと知れたカオティック御用達レーベルであり、現在もBirds In RowLoma Prieta, Oathbreakerなどが在籍し、かつてはTouche AmoreDeafheavenも在籍した、若手〜中堅のUS激情、カオティックハードコア等、すなわち次世代のコンヴァージと成り得るようなバンドたちの集う場所だ。それは、彼らが今後、よりカオティックで荒々しい、言ってしまえば、コンヴァージっぽい音楽性へと変容していくことを予見させるもので、彼らの成長自体は嬉しかったが、同時に音楽性の変化に対する危惧もあり、複雑な気分ではあった。

そんな状況下でリリースされたのが、今回の”Smother”だが、まずジャケットからすでに、モダンというかアナログ感が薄れ、これまでのTopshelfでの統一感のあるジャケットから離れおり、これも彼らの変化への意欲を感じさせる要因だ。前置きばかり長くなっても良くないので、肝心の楽曲の話に移るが、結論から言うと、なるほど僕の予想通り、彼らは以前の彼らではなくなっていた。#1 “Fear Of Missing Out”や#2 “Smother”は地を這うベース、それに絡むようにして展開するツインギターと、ドライな感触がLa Disputeっぽさを感じさせる。この2曲でヒリつく緊張感を保ち、それが爆発するのが、#3 “Perculliar People”で、テンションMAXのエネルギッシュさと、ブライトかつキャッチーで耳障りの良いコード感やフレーズのセンスの良さが発揮された、彼ららしい一曲だ。#4 “Purge”では1stアルバムでも見られた、程よい深度の透明感を持ったクリーン〜クランチトーンとリバーブとスクリームが交差する。少し雰囲気が変わるのが、#6 “Tinnitus”で、ここでは欧州激情やLoma Prietaに見られるようなハードなエモーショナルさ(汗臭さのあるエモさというか)を楽曲に取り入れている。#9 “Trite”でも同じような方向性のアプローチが見られるが、こちらはもっとConvergeに寄せた感じがある。こうして汗臭い楽曲が続いた後にガツンとくるのが#10 “Tangled”で、なんでそんなキャッチーなフレーズを取り入れたのかという疑問も吹き飛ばすハイレベルなハイブリッドさはまさにFrameworksといった感じだ。

 

まとめると、全体としては、初めて1stアルバムの”Loom”を聞いた時のような鮮烈な感覚はなかったというのが、まず一つ正直なところ。

それを踏まえた上で語りたいのが、彼らが足を踏み入れたカオティックという領域に対して、実に見事に親和しているところ、新しい方向性をも柔軟に取り込んで、自分のものにしているところだ。ごちゃ混ぜハイブリッド感とヘナさがウリだった1stに比べると、2ndはハードコアとしてのより洗練された彼らのビジョンと、パワフルにチューンナップ(デスウィッシュナイズド)されたサウンドが見所だ。

この作品によって、これまでのエモリバイバル層のリスナーに加え、新たにカオティック、果てはポストブラック、ネオクラスト周辺をも取り込む勢いすら見せようとしているFrameworks、まだまだこれからも楽しめそうだ。

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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