disc reviewノイジーに叫ぶ陰影からは、鬱屈したヒステリックが染み出す
non communicationsassya-
2012年結成。アグレッシブなジャンク・フレーズに日々の鬱屈、屈折、怒りのこもった言葉の羅列が連なる、東京のノイジージャンク・オルタナトリオsassya-の1stフルアルバム。結成から3年で2枚のEPをリリースし、なおもくすぶる感情の暴走に、追い立てられるようにして書き上げられた今作は、結成4年の若手バンドとは思えないドライさ、鈍器で殴りつけるようなドロドロとしたスラッジーな緊張感をまとった怪作だと言えるだろう。
90年代のディスコーダントハードコアの影響も色濃く、Drive Like JehuやもちろんFugazi, Q and Not Uなんかの変則ジャンク・サウンドを彷彿とさせる不協和ギターと、ドロドロ絡みつくリズム隊は国内のThe GhanやPLAY DEAD SEASON、あるいはkmkms、VACANTといったバンドとも共鳴するサウンドだろう。また、バンド名の響きやネーミングセンスからはエモグランジ系のFailureやShinerと似たフィーリングも感じるし、そのあたりにも造詣が深いように思える。
赤錆が不快な音を出す古いブランコに揺られているような、浮遊感と耳障りの悪い不穏さが一定の振幅を保って揺れ続ける#1 “omit”から始まるこのアルバム、花屋に恨みでもあるのかというような、タイトルを裏切る暴力性の#2 “Flower Box”、時折白昼夢のようにして挿入される爽快感のあるアルペジオが逆に不気味な#3 “Law”、切れ味の良いディストーションギターと耳に残るリフがスピーディな楽曲に凝縮される#6 “Waltz”、などのパワフルな楽曲を経て、ノイジーなラストトラック#9 “CUT OFF”のまさに最後の一言、「cut off」に至るまで、終始漂わせる不穏な空気感と、切れない緊張感は見事の一言。バンド歴からも考えて、年代的にも若いバンドだと思われるが、すでにこの厭世感と、育つ中で聞いてきた沢山の音楽の中からこの方法論を抽出し実践している、パンクスピリットは頭一つ抜きん出ているのではないだろうか。
フルサイズのアルバムは、必然その作業量からしても、そこまでの活動の集大成となることは明らかで、そこには、バンドの経てきた道のりも垣間見える。9曲という自由度の中で、多彩さも見せられたはずだろうが、あくまでも一貫したダークな音楽性を貫いている、このバンドが既に確立しつつあるスタンスという強み、今後の動向も要注目だ。
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