disc review新興の地で湧き上がる、確かな激情の震え
Demorûth
rûthというシンガポールのバンドである。このバンドを単体として知っている人はほとんどいないのではないだろうか。2015年に最初のデモをbandcampで公開、続くリリースは日本の5000、ilillも含めた4バンドのスプリットCDのみ。まだ活動としてはごくごく短い期間のバンドなのだが、これがまた、実に絶妙な泣きメロ系激情なのである。
Orchidなんかの初期激情直系の5000による素晴らしいショートチューン3曲に続くのが、彼らのトラックなのだが、聞いてもらえばわかる通り、実にコード進行がドラマティックで、日本の激情バンドを聞いているような気持ちになる。このクサいながらも涙腺を刺激する感覚と、非常に語りたがりなコード進行は、欧州や北欧、ましてはUSでもなく、Gauge Means Nothingを彷彿とさせるような、国産の激情と親和性が高い。それに乗せるシャウトのナードさも実に素晴らしく思えないだろうか。
さて、今回のレビューはこの音源よりもうひとつ前の”Demo”というタイトルの3曲である。シンガポールの激情ということで、どうしても感じてしまうのが、例えばインドネシアとかマレーシアとか、フィリピンとか、東南アジア周辺にへばりつくようにして少数存在している東南アジア激情とでも呼ぶべき少数派勢力の影響だ。スプリットの音源よりもクリーントーン多めのカラカラなギターサウンドと、泣き叫ぶようなシャウトは健在、時折思いついたかのようにキメを入れながら地声でカウントを合わせるのもいかにもプリミティブでイナたく、土地柄を感じさせる。のっけからカッコイイ進行でぶっとばす#1 “Retaliation”、Carrion Springを思い出させるドタバタさが素晴らしい#2 “Desist”、そしてアウトロで全員で泣き叫び続けながら幕引きという、ほぼほぼ満点な激情新興勢力っぽさを見せる#3 “Tamat”も含めて、3曲で実によく語る音源となっている。
実に捨てがたいエモさと愛おしさを兼ね備えたこのバンド、ぜひ覚えておいて欲しい。そのうち界隈でもっと有名になったりする。。。かも。