disc reviewフォーキーにダンサブルに、心と体を揺らす無常の美

shijun

人生、山おり谷おりMONO NO AWARE

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東京は八丈島で結成された4人組バンド、MONO NO AWARE1stフルアルバム。初の全国流通盤ながら既に完成度は十分。グルーヴィーなバンドアンサンブルは体を心地よく揺らしてくれるし、フォーキーながらフックもたっぷりなメロディと心象風景を独特な言葉選びで切り取った歌詞とで心も揺らしてくれる。多岐に渡るルーツ音楽を飲み込んで曲毎に、いや時に1曲の中ですら景色をどんどん変えて行くところも楽しい。

イントロから軽快なギターが楽しい#1「井戸育ち」。フォーキーで澄んだメロディがゆっくり入り込んでくる。「凱旋門の下でも鬼ごっこは可らしい」なんて歌い出しのフレーズも面白く耳に残る。言葉遊びのような独特の歌詞が楽しい#2「マンマミーヤ」。メロディラインはコミカルながら、どこか煤けた趣きもあって非常に心地よい。ファンタジックに感傷を煽る浮遊感とグルーヴたっぷりの#3「わかってるつもり」。「『ごめんね』なんかの使いどころいつまで経っても解らないだろう」なんてキラーフレーズも飛び出す。#4「イワンコッチャナイ」は再び軽快なキラーチューン。ちょっと情けないぐらいにソワソワしてしまう恋心をユーモアと感性たっぷりに描きあげた歌詞も良いし、レトロな要素を取り入れながら踊らせる感じも、今の海外ディスコポップの流れも感じさせる楽しさ。儚く煌めくギターが切なさを助長する#5me to me」。後半の展開は圧巻の一言。

 

軽快なカッティングに怪しげなラップ風の歌唱が乗る#6To(gen)kyo」。特徴的な言葉選びで描き出される情景は、東京をベースにしつつも、今も未来も過去もないまぜになった幻想的な桃源郷である。優しいタッチで日常を切り取ったミドルテンポの#7「ブーゲンビリア」。アップテンポな至福のギターポップ#8「明日晴れたら」。楽しげな空気感でまとめられた前半からシリアスなラストでハッとさせるところまで完璧。3分半の中でドラマティックな景色が描ける。#9「夢の中で」はプログレムード歌謡とでも言おうか。個人的にはフジファブリック「TOKYO MIDNIGHT」をより色気たっぷりにしたような印象を受けた。中盤の展開が圧巻。最後はアルバムの中でも圧倒的に怪しげな#10「駆け落ち」で締め。粛々とした序盤から、ノイズが入り混じって大爆走。天晴。

フジロックフェスティバルのROOKIE A GO-GO 2016でトリを飾るなどすでに実績も十分。2017年の重要バンドになること間違いない。ぜひ手にとってほしい。初期フジファブリック好きにもオススメ。

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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