disc review優雅な都会の夕景が似合う、成熟したAOR

shijun

WELCOME BACKヒッグスヴィル

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日本の三人組バンド、ヒッグスヴィルのアルバム。前作「マイレージ」から空くこと15年、満を辞して2014年に発売されたアルバムである。出自はネオGSシーンながら、渋谷系シティポップ、AORシーンの重要バンドの1組となり、現在までスローペースながら活動を続けている大御所である。前身バンドロッテンハッツにはあの片寄明人もはじめGREAT3のメンバーが参加していたり、現在では木暮以外のメンバーが真島昌利と「ましまろ」として活動していたり、「ヒックスヴィルと堂島孝平」名義での活動もあったりと、何かと音楽シーンの裏舞台で活躍しているバンドとも言えるかもしれない。

#1「トロピカーナ」のイントロから極上のサックスにカッティング。リゾート感満点。余韻の残し方が上手いアウトロにも注目。打って変わってしっとりと聴かせるAOR調の#2「FLY AWAY」。ハスキーなVo.が心に染み入る。随所でひっそりと、だが確かに存在感を見せる雄大なギターにも注目。小気味良いギターと共に古き良きシティポップを鳴らす#3「今年のクリスマスソング」。アコースティックギターとエレクトリックピアノを中軸にしたシンプルなアレンジで色気たっぷりかつアンニュイに聴かせる#4「ビデオテープ」。2014年にビデオテープというのも良い。シンセベースのリフレインが癖になるアップテンポな#5「LOVE♡SONG」。敢えてややエフェクト過剰気味なギターが不思議な聞き味を出していたり。ブラックミュージック的なノリとスキャットが楽しい#6「帰ろう」。落ち着いたAORながら所々でファジーなギターが顔を見せたりと侮れない#7「Listen」。キラキラしたギターが心地よい#8「くちづけキボンヌ」。この楽曲はでんぱ組.incに提供した楽曲のセルフカバーだが、より色気たっぷりなのにアップテンポになっているのが不思議なアレンジである。三人全員のコーラスワークで穏やかな荘厳さを表現した#9「サンセット サンライズ」。間奏以外はアコースティックギターと三人の歌声だけで、まさに夕焼け、朝焼けを感じさせる穏やかな温かみと寂しさを表現しているのは流石。最後は彼女たちらしい開けたシティポップ/AOR#10「皆既日食」で締め。アコースティックギターを基調にしつつ時折顔を見せるエレキのカッティングが最高。

全体的に高水準、かつ大人の色気を匂わすAORで締められており、優雅で都会的な一時を楽しむのにぴったりな1枚になっている。ぜひ一度手にとってみてほしい。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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