disc review反抗と凶器を褥に宿す、ゆるゆるハードオルタナ
孤独と逆襲EPゆるめるモ!
日本の4人組アイドルグループ、ゆるめるモ!のシングル。ゆるめるモ!は「脱力支援アイドル」を名乗りゆるい雰囲気を醸し出しつつ、楽曲はニューウェーヴを中軸にヒップホップ、オルタナティブロック、パンク、果てはクラウトロックやミニマルエレクトロニカ、ハードコアテクノのようなポップミュージックとの相性が一般的に良くないようなジャンルまで飲み込んでいるのが特徴。 今作はカオティックハードコアとオルタナティブロックと言う凶暴で硬質なバンドサウンドを中軸に置いた一枚に仕上がっている。過去作においては後藤まりこやSUPERCARナカコー、POLYSICSハヤシにミドリカワ書房と言った豪華なゲストクリエイターを招くこともあった彼女たちであるが、今作はゆるめるモ!ではお馴染みとなったハシダカズマ(箱庭の室内楽)と小林愛(miami)、そしてゆるめるモ!メインプロデューサーの田家大知のみで作られている。
イントロから緊迫感満点のギターがけたたましく鳴り響く#1「震えて甦れ」はThe Dellinger Escape Planを意識したというカオティックハードコア。目紛しく景色を変える展開や変拍子などを取り入れたハードコアサウンドが楽しめる。カラオケトラックを聴いてみるとその硬質さに驚かされるところであろう。そこに乗る4人の歌唱は随所でハードコアっぽさを見せる部分もありつつも、その部分も含めてゆるくてキュートな出来になっているのが面白く、彼女たちの魅力と言える部分であろう。割と変態的なメロディの中でストレートでエモーショナルなメロディのサビが映えまくっているのもポイントで、ハードコアの緊迫感すらも大衆に訴えられる分かりやすさに転換して行くための仕掛けとなっている。
#2「孤独な獣」はギラギラとしたギターが特徴的なオルタナティブ・ロック。こちらはPixiesを意識したと言う。確かにPixiesがディスコポップを意識したらこんな風になるのかもしれない。メロディラインもギターのフレーズもめちゃくちゃエモーショナル。静か目なアレンジを施されているAメロがサビのエモーショナルさを引き立てるタイプの楽曲なのであるが、そのAメロにおいても空間を支配するのは掻き鳴らされているギターだと言うところに拘りを感じる。
このシングルには彼女達自身の意思表明の意味が込められている側面もあるそうだが、そんな大事な楽曲にここまで強固なサウンドスケープを持ち込んでくらるのは実にバンド的な発想で、そういうところも少し嬉しくなってしまう。次のミニアルバムも既に発表されているので、今後の攻勢にも期待できる一枚と言える作品だろう。