disc reviewカクセイ、エキゾチック中東トリップヒップホップ

shijun

チャンキーヒールコッテル

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エレクトロニカ、アンビエント、トリップホップあたりの音楽をベースにウィスパーボイスが乗るふわふわとした癒し系チルアウトミュージックを奏でていたのが2ndアルバムまでの彼女(köttur名義)であった。森林をバックに白のワンピースで佇む彼女がジャケットとなっている1stnukonomad」のアートワークはまさに彼女の音楽性を如実に表していた。

しかしこのアルバムの前のCD、マキシシングルの「灼熱ファイターガール」から彼女の路線は一変する。「中東萌え萌えファイター」としての活動を開始し、真の女ファイターを目指しての修行を始めたのだ。本人はそれをカクセイと称している。アートワークも一気に胡散臭いぐらいのエキゾチックさに包まれリスナーを驚愕させたが、その驚愕のコンセプトはより高揚感と刺激に溢れた音楽を生み出した。それまでの彼女のトリップホップやアンビエントの手法にヒップホップ的な手法と中東音楽のドープな手法が組み合わさり、サイケデリックでドープ、トライバルでエキゾチックな楽曲が並ぶのがこのアルバムである。

冷たさと熱気が裏合わせで交わる、都会の空気感を描いたメロウなヒップホップ、#1「チャンキーヒール」。エキゾチックな色気全開で中東フレーズも飛び出す、セルフカバーで生まれ変わった#2「ワンダーランド(トライバルディスコバージョン)」。シタールのフレーズが脳内物質を煽る#3「シャイなユー」。異国情緒を煽るパーカッションにドラッギーなラップが乗る中毒性高の#4「ポッピーパンツ」。脳を犯されそうなエキセントリックヒップホップ、#5「らくにかいらく」。最後はちょっと軽めのテクノポップ#6「シャイニー⭐︎ダーリン(以外はゴリラ)」。トライバルな要素もエッセンス的に効いている。

エキゾチックな中東フレーズとシンプルながらドープな音色がドラッギーで摩訶不思議な世界へとトリップさせてくれる一枚。前の路線を知っている人は非常に面食らうかもしれないが、私はどちらのコンセプトも支持したい。そう思わせてくれる一枚である。ちなみにこの作品を出した後、彼女カナダへの移住を経たがその後の音沙汰は聞こえてこない。彼女の女ファイターを目指す修行は音楽に留まらずとも続いていることを祈ろう。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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