disc review四畳半の片隅で弾ける、カオティックテクノポップ
SAMPLING MADNESSHONDALADY
日本の二人組テクノロックユニット、HONDALADYのミニアルバム。96年に結成されメンバーチェンジを繰り返しつつも現在までマイペースな活動を続けるベテランである。ロックの方法論でテクノ/ブレイクスをプレイし、さらにメロディーや詞世界はフォーク的でもあると言う、そのごった煮な感じの遊び心が楽しい。メンバーのDieがナゴム系のコピーバンドを行なってたり、P-MODELの三浦をプロデューサーに迎えたアルバムがあったり、電撃ネットワークなんかに楽曲提供していたり……と言う感じでも楽しげでカオティック感じが伝わってくるだろうか。
懐かしのゲームBGMやゲームCMをサンプリングしまくり、アルバムアートワークに擬えたイントロダクション、#1「SAMPLING MADNESS」からアルバムはスタート。続くチープでコミカル、キャッチーな#2「らったった」。可愛くてふざけた雰囲気の中に、ちょっとドライな言葉だったりドキッとするようなパートが含まれてたりするところが彼ららしい面白いところ。エキゾチックなイントロから癖になるジャングリーで攻撃的なヒップホップ#3「見得ScrAmble」。エッジの効いた音が脳を揺らしに揺らし、最後まで気を抜かせないいたずら心もある。無骨な音がアドレナリンを誘うシンプルにかっこいいテクノナンバーな#4「Phoenix」。続く#5「U2U2」ではここまでの攻撃的なテクノサウンドから一転、ギターリフを中軸としたミドルテンポの楽曲が聞ける。明るめのトーンながら虚しさと悲哀とが入り混じるとても心地よい楽曲である。チープで怪しげなテクノポップ、#6「赤い狼」。チープな響きの音を選びつつもしっかりとしたボトムを感じさせるのも流石。レトロでパワフルなビートに分厚いギターが乗るハードな#8「SM:)E」。ハードなサウンドに飄々としたボーカルが面白い。ラストは穏やかなインスト、#9「93AD091」。
軸足を置くジャンルこそ違えど、方法論として扱おうとした音楽性だけでなくメロディセンスや空気感などの面において、FLEETやJETTER3などと近い空気感も感じた。楽しくてちょっぴり切なくて、ちょっぴりエモーショナルな1枚。是非手に取ってみてほしい。