disc review北欧音楽シーンの一角を担う、オルタナティブミュージック

tomohiro

VerkligenKent

release:

place:

#3 “Gravitaion”という楽曲。スウェーデンを代表する、オルタナティブ・バンドKent。今回のレビューは96年リリースの2ndアルバムだ。

 

先日、スウェーデンとフィンランドに旅行する機会を得た。もちろん観光旅行だが、自分としての最大の目的はレコードショップ。最初に入ったストックホルムのレコードショップで、スウェーデンのインディー、オルタナ、シューゲイザー、ポストロックでのレコメンドを頼んでまず出てきたのがこのバンド、Kentだった。どれもいいというので、個人的にジャケットが好みであり、リリース年にもいい予感を感じた、このアルバムを購入した。「初期のRadioheadみたいだよ、Radiohead好き?」とか言われたのでますます期待も高まっていた。

確かに、憂いを帯びた湿っぽいボーカルラインや、水深のある透明感には彼らのようなニュアンスを感じ取ることもできるが、どちらかというと演奏やフレージングはドライで、USインディー的音楽性が強く感じられた。だがそれだけにとどまらない人懐っこさを感じるのは、北欧特有の泣きの入った音選びゆえだろうか。

 

#1 “Avtryck”や#2 “Kräm (Så nära får ingen gå)”はギターソロやリフの枯れっぷりと情感たっぷりなボーカルが絶妙なアップテンポの楽曲だ。一方で冒頭で紹介した楽曲や#4 “Istället för ljud”、#10 “Vi kan väl vänta tills imorgon”ではハイトーンでの絞り出すような声の掠れがアダルトな味わいを醸し出す、ミドルテンポの艶やかさをうまく生かした楽曲だ。特に#10はサビでタイトルを繰り返し繰り返し歌う様がエモーショナル。歌詞は英訳するとするなら”We can wait until tomorrow”。この一文からもう溢れ出す感情に胸が苦しくなる。そして長い長いギターソロで一度フェードアウトし、さらにフェードインしたのち2分弱のギターソロが続くという演出も小憎い。

 

スウェーデンでは国民的なバンドだと聞くが、正直初めて名前を知ったバンドだった。スウェーデン語で歌われる歌詞が国をまたぐことを妨げていたのだろうか。非常にいい出会いだった。

 

 

代表曲だと言われている楽曲。Further Seems Foreverのジャケットみたいで勝手にエモっぽいイメージだったがこちらはだいぶエレクトロ的な要素が強い。

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

このライターの記事を読む