disc review音楽シーンを化かすKitsuneとKitsuneの話
狐。
Fox。
狐が、人を化かすというのは昔からよく言われている話で、日本では狐に化かされる民話や童話などは数多く存在する。(こういったイメージは中国からの伝来だという話もある。傾国の美女妲己に憑いたのは九尾の狐であり、日本においても、九尾の狐の話として玉藻前が有名だろう。)
我々が狐に抱きがちなこういったイメージはどうやら東洋におけるイメージらしく、西洋における狐は、ハンティングの対象となることも多く、それほど親しみのある存在ではないようだ。強いて言うならば、こそこそとしてずるい人を狐に例えることがあるようで、昨今話題をさらった映画「ズートピア」でも、狐のニックは、現実主義の皮肉屋という、ニヒルな性格で描かれている。
上の2つの検索結果を見比べていただければ、こういったイメージの違いにもなんとなく納得がいくのではないだろうか。
一体なんの話なんだということなのだが、そろそろ本題に入ろうかと思う。
Kitsuneという名前のバンドが、海外にはいる。
Shinobuで死のう部と読ませるバンドすらいるのだから、狐くらいいてもおかしくはないので調べてみた所、
2バンド、Kitsuneというバンドがいることがわかった。
いや、バンド名かぶりくらいあるでしょ。
そんな声が聞こえてきそうだが、まあ待って欲しい。数ある音楽ジャンルの中で、何故かプログレメタル、スクリーモを土俵に選び、しかも結成は両バンドともここ1年の間。こう書けば多少気になってこないだろうか?
今回は、この奇妙な偶然を面白がった僕が、Kitsuneの名前を持つ2バンドを(おそらく)世界で初めてバンド名に着目して紹介するという記事である。
まず、1バンド目。
Mononoke / Kitsune
カナダのブリティッシュコロンビア出身の4人組バンド、Kitsuneより”Mononoke”を聞いてもらった。狐と掛けて物の怪と解くレベルなので、おそらくほぼ確信犯で日本語の狐が由来だろう。
シーケンスフレーズやヘヴィなリフ、ツインペダルでのバスドラム等、ごくごく近年のメタルコアとよりフュージョンを果たしたスクリーモなのだが、おそらくメタル上がりであろう、ギターのフレーズが絶妙に美味しくてかっこいい 。また、クリアなハイトーンのボーカルワークも、ex- Tides of Manのティリアンや、Saosinのアンソニーなどの美麗メロボーカリストに引けを取らない甘さでとてもグッドだ。
このバンドに関しては、後に書くもう1バンドのKitsuneからの関連検索でたどり着いたのだが、この名前であったことを感謝したくなるベリーグッドなスクリーモバンドだ。他の名前だったらおそらく見つけられなかっただろう。。。
さて、そんな狐つながりのきっかけを僕にくれたもう一つの狐の紹介に移ろう。
Empty Vein / Kitsune
こちらは、フロリダからで、Chonを彷彿とさせるようなメタル上がりのクリーンツインギターが魅力のバンドだ。インストバンドではなく、しっとりとした歌声のボーカルがメロディを歌い上げているのも、Chonよりはもっとアダルトな質感を感じさせる一因だろう。
なかなかに隙のないギター2本の絡みは聞いていてとても気持ちがいい。最近プログレメタル昇華型のインストバンドが流行っているような流れもあるが、ボーカルがいることがその層とのいい差別化になっている。STのepからの先行公開ということで、epの発売が非常に楽しみなバンドだ。この曲はbandcampでの購入もできる。
ニヒル、ずる賢い。そんなイメージのFoxではなく、人を化かすKitsuneを彼ら2バンドがバンド名にした理由とはいかなるものか。
たまたまバンド名が同じだったこの2バンド、今後交わっていくようなことがあればもっと面白くなりそうだ。
ちなみに僕は緑のたぬき派。