disc review溢れる生活、雨、海
波打つ果てまでアライヨウコ
東京を中心に活動するシンガーソングライター、アライヨウコの1stアルバム。エモ、インディーをしっかり下敷きにした大きさのあるメロディと透き通った歌声はまさに波音のように、聞く人の心を揺り動かす。
歌うアライヨウコの所作、呼吸までも身近に感じられ、生活感が溢れこぼれ落ちる、深い蒼に揺れるその歌詞は、清涼感のある瑞々しさを楽曲に与え、アルバム全体を通して漂う蒼が美しい。
#1 ”生活”の、”いつかこの涙も乾くことを僕は知っていて、たまによぎる傷跡は生きた証になる”という大きな歌詞によって幕を上げるこのアルバムは、時として#3 ”レイニーサボタージュ”のように明日雨だったら休みにしてしまおうって言葉や、#8 ”土曜日”の”あぁ、君が今頃バイトサボって、僕と遊びたいって思ってたら良いのに”なんて溜め息交じりに歌う茶目っ気も覗かせたりなんかもする。
まるで、カセットを通して聴いているような、懐かしいノイズとともに始まる#6 ”その波紋となって”では紡がれる歌詞の飾らなさとメロディがひたすらに美しく、涙を誘う。一貫として描かれる、雨、海、波などブルーに彩られた穏やかなその景色は、彼女から見えるこの世界の大らかさと潤いとを感じることができる。
歌われているテーマはとても大きく、果てないものも見え隠れする。しかし、その歌詞、歌声がひたすらに背伸びのない、生活感に溢れたものであるところが、彼女の歌の最大の魅力であり、聴き疲れ無く何度でも繰り返し、身体に染み込ませることが出来る。
雨降りの朝は、このアルバムを聴きながら窓の外を眺めよう。
生活
その波紋となって