disc reviewチープでノスタルジー、00年代前半インディーズJ-POPのオーパーツ

shijun

365デイズJETTER3

release:

place:

日本のロック/ポップバンド、JETTER3のフルアルバム。恋愛信号とcarniesの元メンバーで結成されたバンドであり、ソングライター兼ボーカルを二人擁しているのが特徴。しかしこのアルバムは、二人の個性が生かされつつもアルバムとして一本筋の通った作品になっている。チープなシンセとジャキジャキした分厚いギター、そして人懐っこくてちょっぴりノスタルジックなメロディーが基本構成である。

チープなシンセとメロディが可愛らしいアップテンポな#1「冬のうた」でアルバムは幕を開ける。サビでググッと人懐っこいグッドメロディが現れるのも楽しい。幕開け感満載な楽曲である。続くはキラキラしたテクノポップ調の#2「僕のチョコレート」。「みんなのうた」あたりで取り上げられてもおかしくないような、子供にもわかりやすく、でもちょっぴり毒っぽい歌詞が耳に残る。明るく楽しいアレンジはある種バカバカしさすら感じる部分もあるが、凝ったブレイクがあったりとなかなか侮れなく、むしろチープさは確信犯とさえ言えるだろう。#3「マイニチ×2」はエレクトロ的な浮遊感のあるトラックにチープでガシガシとしたドラムマシンと牧歌的なメロディの取り合わせがエモーショナル。掻き鳴らされるギターがオルタナ的な#4「ウェザー」。J-POP丸出しなメロディとギターソロも良い。ダリアの花や桃の匂いといった印象的なモチーフを幾重にも重ねた詩が面白い#5「星の軌跡」。ある種のセンチメントを感じさせるワードセンスながらも至ってポジティブな楽曲に仕上がっている。

サビ終わりのメロディが耳に残る#7「シリウス」。ハッとさせるエモーションを孕んだCメロにも注目。ネオアコ、渋谷系あたりのセンスも感じる#8「あてもないまま」。これまでとは少し違ったロックンロールなギターもアクセントに顔を出す。ピアノ弾き語り風に始まる#9Belive Me」。サビでの爆発は確かにエモーショナルだが、それ以上に最高なのが愛おしくなるほどの90年代後半のJ-POP臭。大真面目にこのメロディーを書けることが最高なのだ。#10「届けたい」もこのアルバムで幾度となく聞いてきたジャキジャキとしたギターとチープなシンセ、そしてキャッチーなメロディで出来ている曲。だがそれが心地いいのだ。ブレイク後のバーストなんかもシンプルながら良い。夜を思わせるアレンジな#11「遠い空に」。印象的なアコギが掻きむしりたくなるほど切なくてキャッチーなサビメロがこのアルバム一番のエモーションを鳴らす。こういう空気感の変え方も上手い。「幸せにはきっと二つあって~」なんてフレーズを持ってこれるところとか凄くJ-POP的だけど、ブレイクの闇を蠢く胎動みたいなシンセでドキッとさせたりしてくるところとかはやっぱり彼らにしか出せない味。最後はやや壮大さすらあるバラード#12STAY FREE」。

2017年現代の視点から見るのであれば、溢れ出るあの頃感が心地よい一枚になっている。そして良いメロディは色褪せないと言うことがわかる一枚でも。彼らはメンバーの脱退を繰り返しつつも少なくとも2016年までは活動を続けていた。今後活動が続いていくのかはわからないが、埋もれさせるには惜しいポップセンスであったことは間違いない。こういう音楽に再評価の波が訪れることを願って。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

このライターの記事を読む